天使のような子に看病してもらった
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して言葉が、俺の涙腺を崩壊させたのだ。
辛い……辛すぎる。どうして俺は、好きな人の悲しむ姿を見なきゃいけないんだ……! どうして“もう1人の俺”は、こんな状況でも平然としていられるんだ……!?
泣き叫びながら、“もう1人の俺”に対して再び猛抗議する。喉が引きちぎれそうなくらい叫び、骨が抜けそうなくらい思い切り拳を振りかざす。何度も何度もそれを繰り返すが、何の効果も得られない。
いつしか俺は、これが夢だということも忘れ、無我夢中で“もう1人の俺”に殴り掛かっていた。たかが夢、されど夢。例え夢の中でもことりの悲しむ姿を見るのは許せなかった。
「穂乃果ちゃんと、幸せになって……ねっ……!」
遂にことりは泣き崩れてしまった。しかし、それでも“もう1人の俺”は動じない。寧ろ軽蔑や、見下しているような、そんな冷たい表情でことりを見下ろしていた。
「ことりちゃん、やっぱり──」
「穂乃果、ほっとけ。さあ、行こう」
今まで一言も喋らなかった穂乃果さんだけど、ようやく口を開いた。どうやら、ことりに対して申し訳なく思ってる様だけど、それは“もう1人の俺”によって遮られ、そして、それ以上ことりに目を向けることもなく、2人は背を向けて歩き出した。
待てよ……待ってくれよ……! どうしてこんなに悲しんでいることりを放っておけるんだ……!
気が付けば、“もう1人の俺”と穂乃果さんの後ろ姿は見えなくなっていた。残されたのはことりと俺の2人だけ。すぐにことりの元へ駆け寄り、抱き締めようとするが、やはり干渉は出来ず、俺の手はすり抜けてしまった。
「ううっ……ぐすっ……蒼矢くんっ……!」
俺の名前を呼ぶ声。その声は悲痛に満ちていて、聞いている俺までもが辛くなってくるほどだった。すぐ近くにいるのに、何もしてやることが出来ない。慰めることすら許されないなんて、本当に酷すぎる。
もう嫌だ。もう何も見たくないし、何も聞きたくないと、この世界を拒絶するように目を閉じ、耳を塞いだ。すると、どこかに引きずり込まれるような感覚に陥り、同時に意識が朦朧としてきた。
──ああ、ようやくこれで楽になれる。もう苦しい思いはしなくていいんだ。だけど、薄れゆく意識の中で、ことりのことだけが気がかりだった。
ああ、ことり──。
◆
「ことり……っ!」
「きゃっ」
思わず飛び起きた。だけど、視界に入ってきたのは見知らぬ公園ではなく、俺の部屋の光景だった。そっか、そういえばアレは夢だったんだ……良かった……。
あれ、でも左側から絶対に聞こえてくる筈のない声が聞こえてきたような──?
「だ、大丈夫……?」
「えっ、み、南さん……?」
顔を横に向
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