152 表現(いままでのきもち)
[3/3]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
決して皆と仲直りした後も、平穏な日常ばかりが訪れるばかりではなかった事を示したかった。なぜなら自分にとって恩人である堀が凄惨ないじめを受け、笹山が校内テロによって生死に関わる重傷を負ったからである。その時自分は大切な人が傷つけられて呑気にスケートなんてできるのだろうかと自分を責めて大会を辞退しようと考えた事があった。しかし、それは自分の為で人の為になっていなかった。自分に大会で頑張ってほしいから堀は自分に桂川美葡を紹介し、笹山は藤木に怪我して欲しくないと思い、死ぬ気で堀内竜一と格闘していたのだから。
(今度の技は絶対失敗させない!!これには笹山さんや堀さんへの想いが詰まっているからさ!!)
藤木はトリプルフリップ、トリプルルッツ、トリプルループの三回転ジャンプのオンパレードを披露した。どれも失敗する事はなかった。むしろ、藤木が思っている以上の出来だった。
(凄い!!あの三つのジャンプは高評価が付くぞ!!)
片山は藤木の今の三連続のジャンプを称賛した。そしてアップライトスピンを行った。
(そしてここに来てくれたリリィ達に感謝だ!!)
このスピンは9回転で決まった。そして地区大会や中部大会で最終兵器として魅せたトリプルアクセルからのスパイラル姿勢での着地を試みる。藤木はジャンプする。トリプルアクセルは決まった。そして着地する。藤木は右足を伸ばし、右足の踵を右手で掴んだ。中部大会の時は失敗しそうになったが、今度は成功させた。誰もが歓声を挙げないわけにはいかなかった。
「茂、お前はやっぱりすごいぞ・・・」
「茂、アンタはやっぱりスケートやっててよかったねえ・・・」
藤木の両親は感動すると共に息子を称賛していた。藤木茂の演技が終わった。やったんだなというすがすがしい表情で藤木はリンクから引き上げた。そして得点が表示されるのを待った。もし瓜原よりも点を超えれば銀以上は確定するし、たとえ瓜原に勝てなくとも現在二位につけている住吉の得点を超えるだけでも銅以上は確約される。
得点が出た。151.89だった。つまり・・・。
(僅かにわいを超えたやと!?)
瓜原は驚いた。藤木の点数は瓜原の151.54を僅差で超えた。藤木はその場で嬉しさの感情を剥き出しになった。
「やった、やったー!!これで銀以上は決まったー!!」
藤木は嬉しさの興奮が冷めぬまま控室に戻った。
一方、観客席では3年4組の皆が藤木の健闘を喜び合っていた。
(藤木君、貴方の演技、凄かったわ・・・)
リリィは感動で涙が自然と流れて来ていた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ