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=体育祭編= F.T.P
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始まっているようだった。
 実のところ、佐栗も今年の雄英体育祭には興味があったので録画などしているのだが、生中継で見られるならそれもいい。どうせ急患が来ない限りは暫く休憩だ。彼女の座るベッドの横の、特等席となっている椅子に座り、並んでテレビを見る。

「どっちを応援してるんだい?」
「青い方」
「青………ええと、水落石拓矢くんか」

 微かに、どこかで聞いたことがある名前の気がしたが、思い出せなかった。件の水落石くんは、至って冷静にフィールドへ向っている。中肉中性、健康的な肉付き。顔が特別ハンサムという訳でもなく、むしろ対戦相手の方が顔立ちは整っている。相手は轟焦凍――あの顔の痕は、火傷か?いや、医者をやっていると変な所にばかり目が向かう。

『――対するはぁ!!驚異的な野生のカンと計算高さでなんのかんの此処まで生き残った水落石ィ!!でもぶっちゃけ勝ち目なくね?』
『個性でガチンコするんだ、そんなもん水落石に限らず生徒共は百も承知だろ。言い出したらキリがねぇし、ここは戦闘力で結果を出すための場所だ。文句ある奴は民事訴訟の勉強でもしてろ』

 なかなかに酷い司会だ。彼女はそれも気にしていないようだ。

「彼はどんな個性を使うのか、教えてくれるかい?」
「分かんない。体からなんか出すような力じゃないっぽい」
「特殊なタイプだね……対戦相手の子は?」
「氷をズビューって出して、すごい凍らせる。一瞬火も使った?」
「なるほど」

 個性の二重化。そう頻繁ではないが、起こるものだ。
 それにしても氷と炎、本当に両方操れるならそれは相当の強さだろう。炎の個性によくあるデメリットは体が熱を持つこと、そして氷の個性のデメリットは体が冷えすぎる事だ。上手く使いこなせば個性で個性を相殺することさえ出来るだろう。

「轟くんは派手でかっこよさそうだけれども、君は水落石くんを応援するんだね」
「うん」
「それはどうしてだい?」
「応援、したいから」

 敗者、不利な者を応援したい真理というのは誰にだって働くものだ。どっちにしろ、彼女がテレビの展開に一喜一憂する姿はほほえましかった。さて、僕も出来れば不利なほうに勝って欲しい性質だ。彼女と一緒に知らない少年を応援しよう――。

「がんばって」

 ふと、彼女が祈るような声を出した。

「負けないで。貴方ならきっと出来る。私、ずっと応援してる………変えられない未来なんてないもの」

 佐栗はその言葉に、違和感を感じた。その口調はまるで、「彼の事をよく知っているかのようで」――。

 瞬間、彼女の全身から久しく見なかったそれが。
 『青白い光』が、爆発的に放出された。
 
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