=体育祭編= F.T.P
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もオールマイトも、勿論僕も、君たち生徒の抱える問題を全て解決は出来なくとも協力を惜しむことはないさ!」
校長室の下座のソファで俯いていた砥爪は、その言葉にはっとしたような表情を浮かべ、僅かに逡巡し、やがて顔を上げた。
「校長先生。警察が来る前に――話しておきたいことが」
それは、その年の子供が浮かべるそれではない、覚悟の顔だった。
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ささやかな希望があれば、人は生きていける。
『個性』黎明期を経て生まれた闇の世界を一度通った私――佐栗灰一という医者は、そう思っている。
佐栗は金も名誉も興味はない。ただ、医者としてヴィランにもヒーローにも怪我人になるな増えるなとは思っている。尤もそれは自分たちの仕事を減らす事だとは承知の上だが、医者なんてものは暇なぐらいがちょうどいい仕事だ。何より、自分の担当する「彼女」と一緒にいられる時間が沢山欲しいから、急患に来てほしくないという自己中心的な欲求を持っていた。
「彼女」とは長い付き合いだが、彼女と共に過ごした時間は長くとも会話した時間は驚くほど少ない。
「彼女」は、眠り姫だ。植物状態とも寝たきりとも違う、きまぐれに目を覚ましてはまた眠り、一度眠るとずっと寝続けてしまう。食事は碌にとれずに点滴で過ごしているのに、彼女の魅力は佐栗にとって永遠と言えるほど衰える事がなかった。
彼女の目を覚ます為に、随分危ない橋も渡ったものだ。今でこそ立派な医者だが、今でも後ろ暗いつながりは細々と残っている。その社会的汚点と呼べるものも、「彼女」の為だったと思えば無駄とも不快とも思わない。
およそ10年ほど前から、彼女が目を覚ます頻度と時間は少しずつ増えつつある。原因は様々考えられる。裏社会時代に撒いた種がどこかで実を結んだのかもしれない。起きて話をする時間はほんの刹那のように過ぎていくが、それでも小さな幸せが積み重なっていくこの時間は、佐栗のささやかな希望となってくれる。
「――おや、今日はもう起きているのか」
彼女の病室からテレビの音声が流れているのを聞いて、微笑む。いつ起きても退屈しないようにと病室のテレビは常に見られるようにしてあるが、なかなか賑やかしいものを見ているようだ。そういえば今日は雄英体育祭か、と思いながら病室に入ると、思った通りのものを彼女は見ていた。
「失礼するよ。テーブルにお菓子を置いておいたんだけれど、食べたかい?」
「食べたよ。あまあま。おいしかったです」
普段ならこちらに顔を向けてほにゃんとした笑みを向ける彼女だが、今日は相当テレビにご執心のようでテレビを食い入るように見つめている。その視線の先には、二人の少年が闘いの場に赴くところだった。既に決勝トーナメントまで
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