第四話「迷い」
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「俺、やっぱり警察に……」
「それはダメッ!」
「!?」
驚いた雷馬は、咄嗟に朱鳥の方へ振り向いた。彼女は必死な目で怒っている。
「九豪君は何も悪くありません! 悪いのは、関係のない人たちを大勢巻き込んで殺したISの方です!!」
「……」
「私……見たんです。今ても、思い出すたびに心が折れそうになるの……あの時、さっきまで元気に走り回っていた小さな子供が、形もわからない状態になっていて。唯一わかったのは、着ていた服の一部ぐらい……その隣にお母さんだと思う何かと、その周りにも大勢の死体が……」
「ごめん、嫌な事を思い出せちゃって……」
「九豪君は悪くありません。そもそも正当防衛じゃないですか? それに街の人たちを大勢殺した、あのISをやっつけたんですよ?」
「うん……」
しかし、雷馬はまだ戸惑っていた。
「だって、九豪君は……!」
「もう……やめようよ? その話は。大丈夫、だいぶ立ち直れたからさ? 心配させてごめんな?」
そう言って、俺は朱鳥の頭をなでた。
「はぅ……九豪君」
「よし! 休憩したところだし、俺先に行ってるよ?」
「……」
そう、表向きは明るく接していても後姿は悩みを抱えた寂し気な背中をしていた。
「九豪君……」
朱鳥は、一人になったところで明日のスケジュールを確認した。といっても、神社に居るのは主に自分だけだったから今日と同じ段取りだ。
もっとも、神主である父が不在なわけだし、それ以降はあまり仕事がないのだ。しかし、不思議なことに父を名乗る人によって毎月お金が振り込まれているのだ。行方を絶ってもなお、父は生きているんだと信じている。
さて、スケジュールは特に問題はない。強化人間という理由で高校にも行けなくなってしまったことだし……それなら、平日やら休みとかの区別はもう関係ない。
「……よし!」
――どうにかして、九豪君に元気になってもらわないと!
その晩、朱鳥は部屋でコツコツとノートに明日だけのスケジュールを描いていた。
「えっとぉ……こうしてっと♪」
あしたは九豪君を誘って、あの「町」へ行ってみよう。
翌日、俺は早朝に熊牙神社へ出勤する。ここから神社までは徒歩で行けるが、意外と学校より距離があるのだ。
朱鳥との同居の件だが、今住んでるマンションの契約時でいろいろと時間がかかるから今しばらくはマンション生活だ。
それと、不思議なことに退去時に支払う金を両親が送ってきたのだ。もしかして、父さんと母さんは俺が強化人間であることを知っているのか?
そのことを確認したいのに、二人とは未だに行方が分からないし連絡もできない。話せる時と言ったら、あっちからの一方的な連絡ぐらいだ。
「ちょっと、遅れちゃったかな……?」
と、俺は
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