EX回:第62話(改1.5)<水上集落へ>
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運転手さんに敬語? ……年上なのだろうか。その彼は、軽く礼をしてから廊下へと出て行った。本当に謎めいた人だ。
「知っての通りブルネイ鎮守府では今まで、ずっと艦娘の開発を続けていた」
直ぐにブルネイ提督は艦娘たちに目をやりながら続けた。
「だが試作品は失敗続き。現地政府から艦娘を見たいと言われても、ずっと誤魔化してきた。だが、さすがに限界か……と思っていた矢先の今回の演習だ」
それを聞く艦娘たちも初めて聞くであろう話に少し驚いている。
提督は続ける。
「これも何かの縁なのだろう。お前には感謝しているよ。助かった」
「なるほどブルネイも、いろいろ大変なんだな」
彼は改めて艦娘たちを見た。
「我々の試作量産型では、とても不安定で安心して見せられなかっただろう。でも美保のオリジナルの艦娘たちなら、まったく問題ないな」
「いや」
(別の意味で問題大アリだと思うんだが……)
ちょっと引いた表情の私を見て提督が言う。
「なんだ? 深刻な事案でもあるのか?」
「まぁ、見るだけなら……」
私は苦笑した。我ながら意味不明の返事だった。でもブルネイの人たちにとっても艦娘が興味の中心なんだと理解した。
彼は続ける。
「最初に先方から打診があったときは難しい文書でね……うちの奥さんと義兄に翻訳してもらって、やっと分かった」
「ふむふむ」
青葉さんが相槌を打つ。メモを取っているが、この情報は公開するなよ?
提督はアゴに手をやった。
「彼らは、もう量産型艦娘が実用化されていると勘違いしているらしくてね。世間一般には艦娘すら知られていないのに量産化のことまで知っているとは驚いたよ」
「そりゃ確かにすごい」
私は感心した。青葉さんも「へえ」と反応する。
「日本では陸軍も警察も全然無関心なのに海外は進んでいるなあ」
そう言いながら私は、あの運転手さんを連想した。なるほど情報戦に長けているのは深海棲艦だけではない。このブルネイも例外ではない、ということか。
「正直、最初は軍事協力から治安維持まで小難しい文書が続いていたが肝心の艦娘に、まともなのが居ないからウンとも言えない」
彼は苦笑した。
「それが逆に相手には俺というか帝国海軍が渋っていると勘違いされたらしくてね。人員の協力やら鎮守府運営でのいろんな利便を図ってくれたよ」
なんだか海外の部隊も大変だ。青葉さんと夕張さんも互いに目配せをして頷きあっている。提督も続ける。
「まあ、こういう小さな国では有りがちなんだろう。しまいには『見るだけでも良いから……』って話になった。そうしたら今回の演習だ。笑えるだろう」
「なるほどねえ」
彼が言った『渡りに船』は、心から実感したのだろう。
私は口を開いた。
「し
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