03・映す夢
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「ありがとう・・・・・・・。もう・・・大丈夫です」
しばらくして、彼女が呟いて。
「それと・・・・・・・、みっともない姿を見せてごめんなさい」
儚く笑んだその表情。
「・・・・・・・・・気にしなくていい」
そっと残っていた雫を、優しい指先が拭ってくれた。
(伯爵。あんたはこいつを身代わりにするつもりなのか?)
彼のアズリを見つめるときの眼差しは、元恋人を見つめるときのものと全く同じだった。
「なんで、お前は・・・・・・・・。」
「え・・・・・・・?」
おもてを見られたくなくて、言葉もなくきつく抱きしめる。
・・・・・・・・・今だけは、そうしていても許される気がした。
「・・・・・・・・・・さっきはごめんなさい。私・・・もう行くね、」
漸く常と変わらず笑んだ彼女の手首を、そっと掴んだ。
「・・・・・・・・・すこし歩かねえか」
そう呟くと、彼女の返事を待たずに歩き出す。
「な、・・・・・・・ナポレオンさんっ。どこに行くんですか・・・・・・・・?」
「さあな。
・・・・・・・・・・・敬語も『さん』も要らねえよ、普通に話せばいい」
「は・・・・・・・じゃなくて! 分かった、ナポレオン」
そっと微笑む。
「良し。それじゃあ行くぞ」
「うんっ」
★☆★☆★☆★☆★☆★
「・・・・・・・・着いたぞ」
「わぁっ・・・・・・・!」
そこは、一面の花園。
・・・・・・・・・・・見渡す限り、純白のアイリスが咲き乱れていて。
「素敵な場所・・・・・・・・・。」
はぁ・・・。とため息とともに呟いた。
「一人になりたいときによく此処にくるようにしてる。
此処は静かで・・・・・・・、とても美しいからな」
「連れてきてくれてありがとう。本当に素敵なところね・・・・・・・。」
ほころんだ花のように、笑んだ彼女。
「・・・・・・・・・ようやく笑ったな」
笑んだその表情から、零れそうな優しさ。
「え・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・何でもねえよ」
ぶっきらぼうに呟くけれど、おもてを隠すように背けられた横顔。
その目元には朱が散っていた。
「ふふっ・・・・・・。ありがとう」
花の咲いていない場所を選んで、腰を下ろす。
「天国のおばあちゃんも・・・・・・、今の私を見てくれてるのかな・・・・・・・・・・。」
彼女の口調がすこしばかり、揺らめいた。
哀しみを押し込めるように・・・・・・・・。
「ぁ・・・・・ごめんなさい。ナポレオンがいるのに・・・・・・・こんな話、」
ぽ
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