03・映す夢
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「では・・・・・・・・、私はこれで失礼します」
慇懃に一礼をして、セバスチャンが去っていく。
「はぁ・・・・・・・・。」
冷たく虚しい吐息。アズリは思考に載せぬまま、胸に手を当てた。
未来の不透明さへの恐れから、すこし速い生者の証が伝わってくる。
「私、これからどうなるんだろう・・・・・・・・。」
声に載せれば、恐れが膨らんだ・・・・・・気がした。
慌てて首を振る。
「考えるのはなし! すこしだけ、本を読んでいようかな・・・・・・・・。」
『部屋のものは自由に使ってくれ』
伯爵からそう言われていたことを思い出し、本棚から一冊の本を手に取った。
ぺら。頁をめくると、古い本の匂いがして。
シナモンを思わせるような香りに包まれながら、ゆっくりと視線で文字を追う。
「え・・・・・・・?」
ある頁を開くと、まるで一面洋墨で塗りつぶしたように黒く染まっていた。
「どうして・・・・・・・このページだけ?」
ぺらぺらと頁を溯っても、黒染めの箇所はなくて。
「違う・・・・・・、このページ「だけ」じゃない。
このページ「から」なんだ・・・・・・・・。」
その先の頁もまた、すべて黒染で。
(あれ・・・・・・。なんだか・・・頭が重、い・・・・・・・・・・・。)
その頁を見つめていると、段々と思考が霞がかっていき。
重くなった瞼を、知らず閉じた。
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