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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 後編
All for one, one for――
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ェからのメールで叩き起こされたんだよ。マサキの居場所に心当たりが合ったら教えろとか、急に言われたって分かるわけねェだろうが。仕方ねェから知り合いにメール回して、マサキん家に様子見に来たらエギルがいたんだ」
「んで、何が起こってるのかアルゴに聞こうとしたら、すぐ近くにいるってことが分かったんでな。二人で来て見たら、この通りだったってワケさ。……本当に、エミが捕まったのか?」

 クラインと共にアルゴたちの傍まで歩いてきたエギルが努めて落ち着いた声で問う。

「……ああ、確実ダ」
「……黒鉄宮は?」

 エギルが言外にエミの生死を問い、アルゴはそれにはっきりと答える。

「オイラはまだエーちゃんとパーティーを組んでる状態ダ。エーちゃんのHPは麻痺状態になっているけど、減ってはいなイ」
「そういうことなら、行くっきゃねぇな。マサキ、俺たちも助太刀するぜ」
「……断る。足手まといだ」

 マサキが三人から目線を外して呟いた瞬間、クラインの腕がマサキの胸倉に伸び、薄い胸板をカラマツの幹に張り付けた。ぐっ、とマサキの肺から空気が漏れる。

「マサキ……手前ェ……!」

 クラインの顔がぐいっと近づき、胸倉を掴んだ右腕が震えた。

「俺たちだってな、お前とタイマンして勝てねぇことなんて百も承知だ! でもな、この期に及んでんなこと言ってられねぇだろうが!」
「誰も頼んでないだろうが……!」
「お前が頼むんだよ! 囮と肉の盾になってくださいってな! ……この前、お前が冤罪着せ掛けられた時、お前があんなに恩知らずな態度した後も、エミちゃんはお前のために頭下げてたよ。お前のために何ができるかって、涙を零しながら考えてたんだよ! それを、お前は……!」

 身体の側面にあったクラインの左腕が一瞬のうちに振りかぶられ――それをエギルの太い手が掴んだ。

「止せクライン。ここは圏外だぞ」

 ラジエーターの代わりには丁度いい落ち着いた声で宥められ、クラインは殴ろうとしていた左手をだらりと垂らした。「クソッ」と毒づき目を逸らしたクラインの代わりにエギルがマサキを正面から見据える。

「マサキ。今はお前のガキみたいな我侭に付き合ってられん。だがな、俺もクラインも、エミを助けに行く。これはもう決めたことだ」

 エギルはそう言うと、マサキから視線を外す。マサキは暫し目尻と口元を震わせ大きな口呼吸を繰り返していたが、やがて小さく

「……勝手にしろ」

 と吐き捨てた。

「ああ、そうするぜ。アルゴ、マップをくれ」

 エギルはにべもなく答え、アルゴからマップの情報を受け取る。それが終わると、エギルとクラインの二人がまず転移し、続いて思いつめたような表情のマサキがシステムに感知されるギリギリの声量で呟き姿を消した。
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