アインクラッド 後編
All for one, one for――
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アルゴがカラマツの根元に目をやると、一輪の白い花が生えていた。この花は何ヶ月も前からあるが、何度も耐久値の消耗により消滅している。そしてその度にマサキが植えているのだ。今は亡きトウマへの供え物として。
この場所こそ、トウマが嗤う棺桶の襲撃を受け死亡した場所。だからこそ、マサキはどれだけ行方を眩ましたとしてもこの場所には戻ると確信していたのだ。尤も、それがいつであるかはアルゴも把握しておらず、今いるかどうかは賭けでしかなかったのだが。
「エミに伝えろ。何があっても会う気はない」
冷たい声で通告し、その場を後にしようとするマサキ。その足に縋りつき、アルゴは必死に呼び止める。
「待って、待っテ! 話を――」
「いい加減鬱陶しい! これ以上話などない!」
「エーちゃんが、ラフコフに捕まったんダ!」
「…………っ!?」
マサキの顔が一瞬のうちにアルゴへと向けられ、その表情と共に硬直した。アルゴには暗闇ながら、マサキの顔がみるみるうちに青くなり、更に土気色に変わるのがしっかりと確認できた。マサキの切れ長の目は大きく見開かれ、中の瞳は動揺によって見定めるべき焦点を見失い落ち着きなく動き回る。
「……んな……馬鹿な……」
ぽつりと、紫色になって震える唇から零れる。
「今、ラフコフの討伐作戦が遂行中ダ。エーちゃんは、その偵察中にやられタ」
エミを捜しに行って見つけたメモをマサキに手渡す。マサキはそれを、焦点の合わない目で通常の五倍以上の時間をかけて読み、
「……ッ、クソッ!!」
背後のカラマツを震える拳で殴りつけた。マサキの筋力値では十メートル以上ある巨木はビクともしないが、鋭い怒気を孕んだ声は静まり返った平原を容易につんざき、木の枝で眠っていた鳥がバサバサと音を立てて飛び立った。
「……すまなイ……オイラには、こうすることしか出来なかった……だかラ……!」
力なく座ったアルゴが声を張り上げる。それを受けたマサキは震える下唇をギュッと噛み締め、首を回して背後の白い花を見、隙間風みたいに擦れた低い声で途切れ途切れに言った。
「……場所を、教えろ」
「ああ、場所は――」
「待てよ」
アルゴがマップを呼び出して場所を指示しようとした時、よく響く低い男の声と一緒に二人組が木陰から現れた。逆立った髪にバンダナを巻き、全身を武士系統の装備で固めた男と、巨躯に金属製のプレート装備を纏い両手斧を背負ったスキンヘッドの男。二人はどちらもこれから戦闘に赴くと言わんばかりのフル装備で、こちらに歩み寄りながらマサキとアルゴに向ける真剣な眼差しは、言葉を吸い込むような冷たい緊張感を放出している。
「エギル……クライン……どうして、ここニ……?」
「お前
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