アインクラッド 後編
All for one, one for――
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取りのため張り込みをしていた時の経験を生かし周辺の地形、注意すべきモンスター等の情報を教示してくれるアドバイザーの役目を兼ねている。彼女はわたしのツーマンセルの相手でもあり、異常発生時はより敏捷値に優れる彼女が伝令役を務める予定だ。わたしとパーティーのメンバーは、彼女の言葉に無言で頷いた。
行程は順調に進んだ。
アジトの場所は低層フロアの僻地、近郊に大きな街区が存在するわけでもなければ、特に効率のいいファーミングスポットや利のいいクエストの指定エリアがあるわけでもない。当然湧出するエネミーもわたしたちからすれば弱った昆虫みたいに貧弱で、ソードスキルを使うまでもなく、文字通り剣の一振りで霧散していった。
しかし、わたしたちパーティーに弛緩した雰囲気は無く、むしろ歩を進めるごとに緊迫感が膨れ上がっていた。当然だ、今回の相手はすぐに蹴散らせるような雑魚モンスターではなく、その奥に潜む凶悪な殺人鬼たちなのだから。
「よし、ここで団体行動は終わりダ。ここから三手に分かれてハイディング・ポイントで待機、何かあれば伝令役が本隊へ走ル。撤退の判断だけは間違うなヨ」
聞く人間の調子を狂わせる猫騙しみたいなアルゴさんの口調も、今回に限っては真剣そのもの。わたしたちは無言で深く頷くと、いっそう周囲警戒を念入りにそれぞれの持ち場へ進んだ。
わたしたちの持ち場はアジトとして使用されている洞窟の、南側の出入り口。洞窟の南東に広がる森の外縁に接していて、木が多く隠れ場所には困らないが、敵の見張りがいる可能性も高い場所だ。わたしとアルゴさんは姿勢を低く保ち、《索敵》、《隠蔽》スキルをフル活用して洞窟入り口が見渡せる位置に陣取った。そこでもう一度《索敵》スキルで周囲を走査し、反応が無いのを確かめてようやく一度胸を撫で下ろす。しかし気は緩めない。これから本隊が到着するまで約三十分、この場所で監視を続行しなければならないのだから。
肩に手を当てられ振り向くと、アルゴさんが親指で東の方角を指した。事前に取り決めたハンドサインの一種で、本隊への一度目の定期連絡という意味だ。まず待機ポイントについた時点で異常、見張りの有無を報告し、それを材料に作戦の最終決断を下す手はずになっている。わたしが頷くと、アルゴさんは音も無く走り去っていく。この単独行動を余儀なくされる時間が最も危険なのだ――わたしは自分にそう言い聞かせ、緊張の糸のテンションを一層強めた。
視界にパーティーメンバーを示すアイコンが映ったとき、わたしはこの場所で二度目の安堵の息を漏らした。アルゴさんは行きと同じように無音でわたしの隣まで駆け寄り、木の幹に隠れ洞窟を一瞥、
「動きハ?」
「何にも。本当にいるのか、不安なくらいです」
短いやりとりを交わす。アルゴさんはもう一度自らの目
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