アインクラッド 後編
All for one, one for――
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ゃいけない。例え無理なことだとしても、実現させられる可能性を一パーセントでも上げ続ける。それが、一瞬でも皆の前に立ったわたしの義務だもの」
そう語ったアスナの目には、燃え上がるような強い使命感と決意が宿っていた。
偵察部隊に配属されたプレイヤーは一パーティー、六人。そしてその中で一人を除いた五名が、最前線でも指折りの実力を持つソロプレイヤーであった。もちろんソロばかりが集められたのには理由がある。ソロプレイヤーは戦闘中、予想外の敵襲などのハプニングに対して非常に脆弱となる。そのため敵モンスターを事前に察知する《索敵》、余計なモンスターを引っ掛けないようにするための《隠蔽》スキルが重要となり、その二つのスキルレベルがギルドに所属するプレイヤーよりも高い傾向にあるためだ。今回の作戦ではアジトのある層が低層フロアであることから、対モンスター戦闘における危険性は低いと判断されたため、アジト周辺の偵察より重きを置くこととなった。そのため敵の動きを察知するための《索敵》、逆に敵から身を隠す《隠蔽》スキルの熟練度が優先的に考慮されたのだ。
メンバー確定後の会議により、わたしたちはパーティーを更に三つに分けたツーマンセルで行動することになった。三組でそれぞれアジトである洞窟の出入り口を監視しつつ、何らかの異常が発生した場合は一人が伝令役として本隊へ情報を届けることで、フィールドでは使えないメッセージ機能の代替とする。二人パーティー三つとしないのは、離れた位置からお互いのHPバーを監視しあうことにより、万が一一つのコンビが急襲を受けた場合、それを残り二チームが察知できるようにするためだ。
そして、少しでも身に危険を感じた場合、すぐに撤退するべし――最後の一文が認められたとき、パーティー全員がそっと息を吐いたのは決してわたしの気のせいではないだろう。わたしも同じ行動をしたけれど、これから死地へ向かうという状況で、「生きたい」という欲求を認めてもらえるということがこんなにも安心するとは思っていなかった。生きるか死ぬかの場面になれば大多数の人間が生き残る望みの高い方へ流れるだろうが、この言葉があるのとないのとでは、撤退の判断を下すポイントが異なる。使命感に衝き動かされ、視野が狭くなった結果、撤退もできなくなっていたということになれば目も当てられない。実際に殺人鬼と剣を交える本隊からすれば何を甘っちょろいことを、と罵られるかもしれないけれど、こっちにだって生死がかかっているのだから、譲れるものではない。
「じゃ、行こうカ」
最終確認を終えて真っ先に口を開いたのは、今回唯一攻略組以外から選出されたアルゴさんだ。彼女はこれから向かう洞窟がラフィン・コフィンのアジトであることの裏を取った情報屋の一人であり、わたしたちをそこまで導くガイド役と、裏
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