誘い
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ど前には何度も通っていた士官学校であるが、ハイネセンからの旅程は随分と長いものだった。
来客用の駐車場に車を止める。
戦術シミュレーション大会も後半戦とだけあって、広いはずの駐車場が関係者の車両で埋まっていた。
「失礼します、所属を確認させていただけますか」
近づいてきたのはまだ若い、士官学校の候補生だ。
当直勤務の一つとして、駐車場の見回りがある。
広い場所だからちょっとくらいと、一般人が止める場合がある。
それを防止するという実に簡単な任務だった。
「ご苦労」
助手席から姿を現した大柄な男が、姿を現し、敬礼を行う。
「第四艦隊所属のマルコム・ワイドボーン少佐だ。こちらは」
エンジンを切って、姿を現したのは目つきの悪い男。
「烈火のアレス!」
「ああ。後方作戦本部所属のアレス・マクワイルド中尉だが、知っているようだね」
「もちろんです。アレス中尉のデータは今では貸し出しが三か月待ちですから。お会いできて光栄です」
「マクワイルドのシミュレーションなど、何の役にも立たん」
「え、あ」
「こいつの動きを普通の人間が見て理解できるわけがない。真似をしたところで、無様になるのがオチだ。どうせ見るなら、ヤン・ウェンリーのデータを参考にしておくのだな」
「ひどいですね」
「事実だろう」
唐突な毒舌に目を白黒させる候補生を残して、アレスとワイドボーンは士官学校の中へと足を進ませた。
戦術シミュレーション大会準決勝。
果たして、誰が残っているのだろうかと歩いていく。
+ + +
ライナ・フェアラートは機嫌が悪かった。
普段はまるで感情を表に表すことがないが、フレデリカは理解している。
怒っていると。
もう、アレス先輩ってば。
思わず愚痴りたくなるのは、その原因であろう先輩の名前だ。
先日の夕食時に聞いたアレス・マクワイルドのデート。
それ以降、ライナは表立って感情を発露することはないが、明らかにおかしくなっている。
それは昨日の戦いでも明らかだ。
三学年の主席がいるヘンリー・ハワード候補生に対しての準々決勝。
驚くことにライナはミスをした。
それは些細なミスではあったが、精密機械の異名をとるライナが初めてミスをした瞬間だった。幸いなことに、ミスが些細であること、また五学年の先輩が動きを立て直したこともあって、勝利することができた。
だが、今日は。
フレデリカが反対側に視線を送れば、そこには小柄な――とても最上級生には見えない少年の姿があった。
セラン・サミュール。
五学年次席であり、主席であるテイスティアに次ぐ実力の持ち主。
もし対戦相手が彼であれば、些細なミスは些細とは言えない大きなミスにかえられ
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