食卓の時間
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料理を作り研鑽しているのが理解できた。
「まぁ趣味だからな。この程度なら練習すれば誰でも作れる。」
「いや、この短期間で作れる同年代の男の子ってそういないと思うよ?」
そんなもんかね…と呟きつつ急須でお茶をいれ中村の前に差し出す。
「まぁ腹が減ってはなんとやら…と昔の人は言ってたしさっさと食うぞ。味は保証する。」
「じゃ、じゃあ…いただきます。」
中村は席に座り香辛料と生姜の香ばしい匂いが強烈に感じる真っ赤な麻婆豆腐を取り皿に盛る。
(うわ…食べる前から絶対に美味いじゃん…でもあからさまに辛そう…もう四川料理専門の中華専門店で出されるそれじゃん!)
ゴクリと唾を飲み…激辛であろう麻婆豆腐を恐る恐る口にした瞬間、中村の表情が驚愕のそれに変わった。
「これは……辛い……けど美味しい……!」
一口、また一口と箸が進む。確かに辛いが見た目ほどの辛さはなく、寧ろ辛さの後にくる旨みが身体中を打ち付けるような旨みを引き出していた。
「あぁ……程よい辛味で飯が進むな」
フッ…と笑みを浮かべ丈一郎の表情は当然だとばかりのドヤ顔だ。
「なにこの麻婆豆腐…下手な飲食店のよりも段違いに上手いんだけど」
最初に盛られていた分は皿の上からあっという間に消え去った。否、消え去ってしまった。そして食べ終わってしまった後の寂寥感に言うべき言葉がかき消される。頭の中はひたすら次を求めてしまっていた。
「中村……白米のおかわりはいるか?」
「おかわり!」
「……はいよ。」
先程と同じ量の白米を盛り、中村に渡すと先程と同じペースで麻婆豆腐、白米の順番に頬張る。
「美味い……マジで美味すぎなんですけど……でも、美味すぎてなんか悔しい…」
バクバクと麻婆豆腐を美味しそうに食べ進める。このペースだと5分もしないうちに全て平らげそうな勢いだ。
「やれやれだぜ…」
まぁ作った本人としては嬉しい限りってもんだから良いか
「ん?何か言った?」
「別に何も…それより今日の朝つけたキュウリの浅漬けがあるんだがそれも食べるか?」
「え!なにそれちょー食べたい!」
「はいはい…今取ってくる」
こうして普段は物静か食卓から騒がしくも少々心地よい時間が過ぎていった。
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