130部分:第十話 夏に入ってその十二
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第十話 夏に入ってその十二
「あまり。読んでいなくて」
「ああ、そうだったんだ」
「マガジンの方を読んでます」
そしてそちらだというのだった。
「読むのは」
「そうなんだ、マガジン派なんだ」
「他には怪奇漫画が好きです」
このことも言うのだった。
「そうした漫画も」
「へえ、そうなんだ」
怪奇漫画が好きと聞いてだ。陽太郎は意外な顔になった。そしてその顔であらためて月美を見てそのうえでまた彼女に声をかけたのだった。
「西堀って。いや、前にそんなこと言ってたっけ」
「言ってましたっけ」
「こんな話した気がするんだよ」
こう言う。
「前にな」
「それってつまりは」
「つまりは?」
「あれですよね。結構お話してきて」
月美はにこりと笑って陽太郎に話すのだった。
「それで、ですよね」
「それでなんだ」
「だって。お話してないとこうしたこと思いませんよね」
「あっ、そうか」
言われて気付いたことだった。
「言われてみればそうだよな」
「そうですよね。何度もお話しているから」
「だからですよね」
「そうだよな。そういうことか」
「ええ。そういえば私達って」
そこからだった。自分達のことも話すのだった。
「最近こうして」
「そうだよな。一緒に話すること多いよな」
「そうですよね。登下校の時とか」
「そのおかげで本も読むようになったしな」
陽太郎の顔はここでは微笑みになっていた。
「西堀の薦めてくれた本な」
「どうですか?芥川とか太宰とか」
「いいよな。太宰って最初は抵抗あったんだよ」
「男の人って太宰に抵抗ある人多いですよね」
「俺の場合は食わず嫌いだったけれどな」
自分のことも話すのだった。
「けれど実際読んでみたら」
「いいですよね」
「ああ、かなりいいよな」
笑顔になっていた。それも二人共にだ。
「とてもな。それに」
「それに?」
「太宰の小説って読みやすいよな」
このことも言うのだった。話は自然に文学論にもなっていた。
「かなりさ」
「ええ、太宰はどの作品も読みやすいですよ」
「難しい表現とかあまりないっていうか」
「芥川は作品によって難しかったりしますけれど」
「だよな。芥川はな」
芥川の話にもなるのだった。芥川は作品によって文章を変えたりするのである。それによって非常に読みにくかったりするのである。
「読みにくいよな」
「はい、作品によって本当に」
「古典みたいな作品もあったしな」
「けれどそれって考えてみたら凄いですよ」
「凄いんだ」
「だって。古典の言葉なんてそうは書けませんよ」
月美が言うのはこのことだった。
「私だってそれは」
「そういえば俺も」
「いざ書けって言われたら無理ですよね」
「
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