13部分:第二話 受験の場でその一
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第二話 受験の場でその一
第二話 受験の場で
「うわ、凄い数だな」
「そうね」
陽太郎と星華は一緒の電車の中にいた。その中で自分達と同じ年齢の様々な制服の面々に四方八方を完全に囲まれていた。まさに満員電車であった。
「これ全部八条高校受けるんだよな」
「やっぱりね」
「俺大丈夫かな」
陽太郎はあらためて電車の中の彼等を見回して言うのだった。その顔は目に不安の色をありありと浮かび上がらせてしまっていた。
「こんなところに受かるのかな」
「受かるのかなって」
「だからさ。こんなに多いんだぜ」
その電車の中を見回しながらの言葉である。
「それでさ。大丈夫かな」
「何言ってるのよ」
しかしであった。星華は笑ってその彼に言うのだった。
「皆そう思ってるわよ」
「皆って?」
「だから。今から八条高校に行く皆がよ」
そう思っているというのである。
「受かるかどうか不安に思ってるわよ」
「そうなんだ」
「受かると思っている人でも受験は意識してるわ」
それはだというのだ。こう彼に話すのだった。
「絶対にね」
「じゃあ同じだっていうんだな」
「そうよ。同じよ」
あえて笑顔を作っての言葉だった。
「皆同じだから」
「そうか。同じか」
「しっかりしなさいって」
狭いので背中を叩くことはできなかった。しかし叩きたいのは事実だった。そのうえでの言葉である。
「そんなことはね。気の持ちようよ」
「気の。そうか」
「そうよ。受けるからにはね」
わざと明るい言葉も出してみせた。自分の中の不安を隠すのと共に陽太郎のテンションをあげて合格してもらおうと思っていたからである。だからこそ出したのである。
「受かるわよ」
「そうだよな、やっぱり」
「あんた昨日何食べたのよ」
陽太郎をさらにリラックスさせる為に昨日の夕食のことも尋ねるのだった。
「それで何食べたの?」
「ステーキにカツだけれど」
陽太郎は星華の問いに素直に答えた。
「それだけれど」
「敵に勝つね。じゃあいけるわ」
「いけるんだ」
「受かるわよ、勝ちなさいよ」
また笑顔を作って言ってみせたのである。
「私だって昨日は同じもの食べたしね」
「佐藤もか」
「そうよ、私もよ」
その通りだというのである。
「私もね。そうしたから」
「そうか。そうなんだ」
「受かるわよ、いいわね」
「ああ、じゃあ」
「それにしても」
星華はここで言葉を変えてきた。
「四月からこの電車で毎日通うのね」
「そうなるんだな」
「満員電車って慣れてないけれど」
「それは仕方ないかな」
「けれど。楽しみだわ」
こんなことを言うのだった。
「この電車で毎日っていうのもね」
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