厄災の月
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の噂は年を日を追うごとに広がっていった。たくさんの尾ひれをつけて。
「厄災の魔導士ってのは普段から俺たちを監視してるらしいぜ」
「悪いことをするとそれが何倍にもなってこの8月に跳ね返ってくるんだと」
その噂の大半は帝国側から出されたものだった。それは、国の繁栄を望んでいたオーガストならではの策略で、次から次へとハマっていった。
「陛下はそいつを改心させるために国を空けているらしい」
「皇帝陛下でも時間が掛かるのに、俺たちじゃどうしようもないじゃねぇか」
イシュガルによく渡るゼレフは実は悪を退治するために動いているのだと流し人々の信頼を得る。しかも絶対的な悪と思われている彼をあえて改心させ、仲間にしようとしていることにし、懐の深さを大きく見せようとした。
「陛下が戻ってくるまで俺たちにできるのは、祈ること」
「普段から慎んだ行動を取ること」
「そしてウソをつかず、正直に生きること」
恐怖の月を乗り越えるために人々は己の行動を改めた。よりゼレフに従順で、悪事を決して許さない。それが恐怖の月、厄災の魔導士の物語。
厄災の魔導士オーガスト。彼の目の前に伏せている5人の男たち。
「全滅・・・魔女の罪が全滅したというのか・・・」
あり得ない出来事に倒れているジェラールが困惑している。そんな彼をオーガストは静かに見下ろしていた。
「こいつ・・・」
オーガストを見上げようとしたジェラール。だが、それを阻むように彼に頭を踏みつけられた。
「貴様はかつて陛下を信奉していたな。なぜ陛下と戦う道を選んだ」
「・・・光を・・・手に入れた。俺の闇を照らす・・・心の光を・・・」
脳裏に浮かび上がる緋色の女性。彼女を思い出しただけで彼には気力が満ちてきた。
「光は正義か?闇は悪か?浅いな」
「!」
「陛下には一人の息子がいた。強大な光の力を持って生まれた子供だった」
ゼレフに子供がいたことに衝撃を受けるジェラール。その子供が目の前にいる老人だと知ったら、彼はどのような反応をしたのであろう。
「だが・・・その子供は誰からも愛されることなく、やがて光と闇の間をさまよい無の境地に達した。光と闇に善悪など存在せぬ。正義があるとすればそれは愛だけかもしれぬな」
そういい残しその場を後にするオーガスト。トドメを刺すことすらされなかったジェラールは悔しさで拳を握り締めた。
「黒魔導士の子供・・・それを倒せるのは、真実の愛を知るものだけだろうな」
ニヤリと笑みを浮かべるティオス。アルバレスの二人の戦士を前に、果たして活路を見出だす
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