厄災の月
[1/6]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
8月・・・その月は西の大陸では多くの厄災が降り注ぐと言われていた。
「大変だ!!隣の奥さんが倒れたぞ!!」
「何!?」
忙しなく降り注ぐ厄災・・・その大きな理由は誰の目から見ても明らかなものだった。
「オーガスト様。城下ではまた多くの人が倒れているそうです」
「そうか・・・」
西の大陸では8月はもっとも気温が高くなるとされている。その結果起こりうるのが、日射病、食中毒、栄養失調・・・まだ国を建国したばかりの頃は、皇帝であるスプリガンも国にいないことが多くあり、知識も乏しく小さな国であったアルバレス帝国はそれを防ぐ術を持ち合わせていなかった。
「なんでこんな目に合わなければいけないんだ・・・」
「一体どうすれば・・・」
大人も子供も、男女問わず苦しい姿を目にしない日がない月・・・それは民の不満に繋がってしまっていた。
「こんな時に陛下はどこにいっておられるのだ」
「私たちが苦しんでいるのに手を差し伸べてくれないなんて・・・」
不平不満が日々募っていく。それが爆発するのがいつになるのかはわからない。しかし、まだ始まったばかりの国で暴動が起きれば、瞬く間に他国に知れ渡り、多くの民が犠牲になることは間違いない。
「陛下を呼び戻しましょう!!」
「どこにいるのかわからないのにか!?」
皇帝を呼び戻そうにも彼がどこにいるのかわからない当時のアルバレスの兵隊たちもギクシャクしていた。このままではさらなる混乱に陥るまでに時間はかからない。
「皆のもの、狼狽えるな」
その様子を最前列で見ていたオーガストは口を開いた。ようやく大人に近づいてきた頃の彼は一度口を開けば周りが萎縮し、静まり返るほどの魔力を持っていた。
「この騒ぎを静めるのは容易いことだ」
「「「「「え!?」」」」」
その言葉にアルバレス軍も、当時仲間になったばかりのアイリーンも驚きの視線を彼へと向けていた。
「オーガスト様!!それは本当ですか!?」
「でしたらすぐにでも・・・」
民を救ってほしいと懇願する兵隊たち。だが、彼は首を縦に振らなかった。
「民の不満を抑えるのは簡単だ。だが、それではこの国は栄えない。さらなる繁栄のためには必要なんだ。絶対的な悪が」
「絶対的な悪・・・ですか?」
静かにうなずくオーガスト。彼は苦しむ民に背を向けると、彼らに言い放った。
「その絶対悪に、私がなろう」
ティオスたちの戦闘地域から大きく離れたその場所では、傷だらけの魔女たちが崩れ落ちていた。
その前に立ちはだかるのは、全身の肌が真っ赤に変化したオーガスト。
(まるで・・・話にならない
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ