第二十七話:報復1
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……」
超現場主義な性分では今の状況は生殺しに近い。とにかく、今の彼女は暴れたかった。というのも──。
「ナタル……オメー、何をやらかしやがったんだ?」
同期でありテストパイロットのナターシャ・ファイルス元大尉。の理不尽とも取れる仕打ちが彼女を苛立たせていた。ナターシャはハワイでの演習中、突如乗機を暴走させてIS学園生徒を襲撃、代表候補生たちの攻撃により撃墜・拘束され、当収容所に収監される。イーリスが聞かされたナターシャの罪状であった。
判決は階級剥奪の上不名誉除隊。その後、民間の特別刑務所に移送し終身刑というあまりにも重い判決だった。
当然、イーリスは抗議し、ポケットマネーをはたいて弁護士までつけた。しかし、悲しきかな。国家絡みの見えざる手により、判決は覆ること無く、刑が執行されるのを待つ状態となってしまった。
──何もかもが胡散臭え……福音の暴走自体ナタルが仕込んだ事自体が怪しすぎるし、何よりお粗末だ。裏に絶対何かがある。
その時、船内に警報が鳴り響いた。慌ててオペレーターが端末を操作するが、船内の監視カメラが映していたのはこの世の地獄だった。一体そこには何人の兵士が居たのであろうか。それを考えることすら難しい。手、腕、脚、腸、頭、そして大量の肉片と血しぶき。
まるで半端に予算を与えられたできの悪いホラー映画のワンシーンだ。だが、そこに映っているのは、確かにさっきまで食堂で飯を食って上官に怒鳴られながら訓練をこなし、共に任務を乗り越えてきた仲間たちだったのだ。
あまりの惨状にオペレーターの何人かが嘔吐する。イーリスでさえ喉まで反吐が出かかったが寸でのところで堪え切ることに成功した。
「他は!?他のカメラの映像を回せ!」
直ぐに艦長が指示を飛ばす。正気を保っていたオペレーター達が慌ててコンソールを動かす。カメラを切り替えるたびに同じ様な惨劇がかたちを変えて画面に拡がる。
何度めかの同胞のぶつ切りを映し終えたか。唐突にそれは現れた。漆黒のしなやかな体躯をしており、両手は手斧のような異形へと変わり果てていた。貌は殻を剥いた卵のようなそれで、表情というものをまるで伺えない。
「VT……システム!?」
オペレーターの一人が絞り出すように喘いだ。
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