巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その九
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「無闇に攻めずにな」
「敵の動きに合わせてですな」
「退く」
「そうしつつ戦いですな」
「無駄に兵を失わぬ様にしますか」
「そうする」
こう言うのだった。
「今はな」
「では」
「その様に戦いましょう」
「まさか鉄砲騎馬隊を破るとは思いませんでしたが」
「いや、あれを破ることもな」
まさにとだ、政宗は馬上で言った。
「あの御仁ならばな」
「ありましたか」
「あの様にですか」
「破ることも」
「あったのですか」
「うむ、充分にな」
伊達家の誇る鉄砲騎馬隊、この家の軍勢にとってはまさに切り札であり必勝の軍勢であった彼等をというのだ。
「あったわ、だからな」
「それで、ですか」
「あの軍勢を破ることもですか」
「充分にあり」
「今の事態もですか」
「考えられましたか」
「そうじゃ、しかし見事な戦いぶりよ」
こうも言った政宗だった、幸村の采配とその戦を見つつ。
「あれだけの将、そうはおらぬわ」
「ですな、確かに」
「天下広しといえど」
「あれだけの戦が出来るとなると」
「そうはおられませぬな」
「天下一の武者よ」
まさにと言うのだった。
「あの戦ぶりは、ではその真田殿とな」
「これよりですな」
「我等は死力を尽くして戦う」
「そうしますか」
「わし自ら采配を執る」
奥羽の覇者と言われた政宗自身がというのだ。
「そして戦うぞ」
「何と、殿がですか」
「御自ら采配を執られてですか」
「戦われますか」
「そうして真田殿に向かわれますか」
「そうするぞ」
政宗は実際に自ら兵を率い馬上から采配を執ってだった、果敢に攻める幸村の軍勢と戦った。だがそれでも幸村は優勢なままで。
そしてだ、大坂城の方から大野の使者が来て言われたのだった。
「今日はでござるか」
「はい、城まで戻って」
そしてというのだ。
「そのうえで、です」
「明日にですな」
「戦われよと」
その様にというのだ。
「右大臣様が言われています」
「わかり申した」
幸村は大野が送ってくれたその使者に答えた。
「それでは」
「はい、これでですな」
「我等は下がります」
「そして城までですな」
「戻ります」
そうすると言うのだった。
「これより」
「左様ですか、では」
「はい、今より兵を退かせます」
今も戦っている彼等をというのだ。
「そしてです」
「城までですか」
「無事に戻りましょう、そして」
さらに話した幸村だった。
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