巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その八
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「真田殿の首を取ればな」
「今の状況も変わりますな」
「敵将を討てば」
「その首を取れば」
「左様、では攻めるぞ」
押されている状況だがそれでもというのだ、片倉は押さえていてもそれでもだった。幸村を討ってというのだ。
この状況を覆そうとしていた、そして実際にだった。
片倉は刀を抜いたままの鉄砲騎馬隊を再び突っ込ませた、そこに彼等に対する幸村も突っ込んできてだった。
その二本の十字槍を縦横に振るってだった。
自分の首を取ろうと迫る伊達の者達を次々に倒していた、伊達家の命知らずの者達をまさに右に左にだった。
薙ぎ倒していく、そして彼に続く十勇士達も兵達もだった。
赤い巨大な火球となり水色の伊達家の軍勢を押す、それを伊達家の軍勢の後ろで見た松平忠明は思わずこう漏らした。
「恐ろしい戦ぶりじゃな」
「はい、真田殿は」
「あの伊達殿が押されていますぞ」
「何という強さか」
「まさに火球ですな」
「うむ、あの攻めではな」
まさにというのだった。
「流石に伊達殿もな」
「勝てませぬな」
「伊達家の先陣は片倉殿ですが」
「あの方でもですな」
「後藤殿を破ったあの方でも」
「勝てぬわ」
忠明は唸って家臣達に話した。
「到底な」
「左様ですな」
「この度の戦は」
「如何にあの方でも」
「とても」
「うむ、しかしその伊達殿をお助けしてじゃ」
そしてと言うのだった。
「これより戦うとしよう」
「では」
「急いで馳せ参じましょうぞ」
「これより」
「伊達殿の助太刀に」
「そうしようぞ」
こう言ってだ、そのうえでだった。
忠明は兵を急がせそうして伊達家の軍勢の助太刀に向かった、だが政宗はその忠明の軍勢を後ろに見て言った。
「如何に松平殿の軍勢が助太刀に来られてもな」
「それでもですな」
「真田家のあの強さでは」
「例えどれだけの軍勢が来ても」
「助太刀に来てくれても」
「無理じゃ、十万もの大軍でないとな」
それだけのものでなければというのだ。
「退けられぬわ」
「左様ですな」
「真田丸の時と同じくです」
「真田殿は強いですな」
「上田の城でもそうだったそうですが」
「まさに鬼ですか」
「うむ、鬼じゃ」
まさにとだ、政宗はその隻眼を鋭くさせて言った。
「その真田殿との戦、小十郎でもじゃ」
「荷が重い」
「そう言われますか」
「むしろその真田殿に果敢に向かう勇を褒める」
片倉のそれをというのだ。
「見事じゃ、ではな」
「はい、ここはですか」
「下手に攻めず」
「軍を退かせる」
「そうしますか」
「戦は続けるが」
しかしというのだ。
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