127部分:第十話 夏に入ってその九
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第十話 夏に入ってその九
「凄く。私いつも助けてもらってますから」
「何だかんだで面倒見もいいからな」
「何だかんだですか?」
「今一つ考えてることがわからないんだよ」
腕を組んでの言葉だった。
「あいつはな。だからな」
「何だかんだですか」
「ああ、何だかんだだな」
だからだというのだ。
「あいつはな」
「そうだからですか」
「ああ、それでな」
「はい、それで」
「あいつ期待してくれとか言ってたんだよな」
「期待ですか」
「ああ、そう言ってたよ」
こう話すのだった。
「実際にな」
「どういうことでしょうか」
「あいつ秘密主義でもあるしな」
椎名のそうしたことについても言及した。
「そこがな。どうもな」
「複雑ですか」
「ややこしいっていうか手の内読めないんだよな」
少し困惑した言葉だった。
「あいつだけはな」
「それが愛ちゃんですから」
「やっぱり普通に悪戯してるんだな」
「悪戯ですか」
「ああ、そうじゃないのか?」
こう月美に話す。
「あいつは。悪戯っ子とかなんじゃ」
「確かに悪戯とかは好きですね」
「じゃあやっぱりそれか」
陽太郎は今は腕を組んでいた。そのうえでの言葉だった。
「あいつは」
「あいつはって」
「考えてることがわからないんだよな」
またこう言う。
「どうにもな」
「それもわざとなんですよ」
「わざとか」
「あまり本音とか見せるの好きじゃない娘ですから」
「それでか」
「ええ。それでもですね」
ここで言葉を付け加えてきた。
「愛ちゃんは嫌いな相手とは絶対に話さないんですよ」
「えっ、そうなのか」
「はい、そうなんです」
このことはだ。陽太郎がはじめて聞くことだった。彼はそれを聞いて少し驚いていた。
「実は」
「そうだったんだ、あいつは」
「気付きませんでした?」
月美はこうも言ってきた。
「そのことは」
「ああ、ちょっとな」
戸惑った顔で首を捻りながらの言葉だった。
「それは」
「そうだったんですか」
「ほら、あいつってさ」
そして椎名のことを話すのだった。
「感情表に出さないじゃないか」
「はい、そうですね」
「だからさ。そういうのはさ」
「気付かなかったんですね」
「とても。そうだったんだ」
首は捻られたままだった。
「あいつってそうだったんだ」
「あれで好き嫌いはっきりしてるんですよ」
また言う月美だった。
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