解決?
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子孫は生き残っているわけであるが、食生活まで残っているわけではない。
大多数の意見によって残されたのは、過去でいう洋食と呼ぶものだ。
食べる機会も少ないうえに、特徴的な調味料を使う和食は、いわば特異な料理として残っているだけだ。
本当に連れて行っていいのか。
あるいは、何らかの間違いでシノブを口説くために日本料理店の紹介をお願いしたのではないか。そう疑っていた自分の想像は、あっという間に裏切られた。
まさか。
うまいと言えば、夕食で出るというにはあまりに質素な鮭の酒粕焼きにご飯、味噌汁をあっという間に平らげ、しめには納豆卵かけご飯まで頼んでいた。
過去には日本人だったシノブがいう。
卵は生では食べられないし、納豆はそもそも腐っていると。
きっと同僚や友人に勧めたら激怒される。
まして、上司に勧めることなんてありえない。
それをアレスは迷わず頼んでいた。
漢字で書いていたのにも関わらずだ。
様々な疑問が浮かぶ。
なぜ漢字を知っているのだろう。
そして、なぜあんなに嬉しそうなのだろうと。
けれど、横を見る顔はとても幸せそうで。
それを自らの問いで表情を崩すにはあまりにも無粋。
「見てください。結婚式ですよ」
だから、別の質問を投げかけた。
「ん。ああ、そうだね……」
そこでアレスは初めて気づいたように、結婚式のほうに目をやった。
どれだけ日本料理が好きだったのだろう。
「幸せそうだ。できるならば、ずっと幸せでいてほしいものだね」
「結婚式の日にそれを考える人はいないと思いますけれど」
「そうか。今の時代はそれを願う人のほうが多いと思うけれど」
「そんなことは」
口を尖らせたシノブの言葉は、途中で奪われた。
激しくなるサイレンと走る車の音でかき消されたからだ。
「ほら、せっかくのシーンが台無しだ」
そんな光景をアレスは驚きもせずに、ゆっくりと見送っている。
「先ほどから随分と警察が動いていますね」
「軍もね」
と、促すように見れば、走る車の多くのナンバープレートが軍であることを表す特殊な記号が使われていた。
そう言われて、シノブは初めて気づいた。
サイレンを鳴らす車両の他に、やけに軍の車両が多い。
いや、それだけじゃなく。
他も同じ方向に動いている車が多いような。
ほとんどが同方向で、それがシノブ達の務める後方作戦本部の方向であったのだが、気づいたのはアレスだけであったようだ。
興味深げに見送る様子に、どうかしましたかと問いを向けるシノブにアレスは静かに首を振った。
問いには答えず、ただどこか楽しげに、走る車の列を見送るのであった。
+ + +
「フェザーンの大手軍事企業で
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