124部分:第十話 夏に入ってその六
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第十話 夏に入ってその六
「間違っても妹さんとか連れて来ないこと」
「幾ら俺でもそんなことしないよ」
「わからないから」
「普通デートに妹は連れて行かないだろ」
「おい、御前今よ」
「凄いこと言ったけれど」
今の言葉にだ。すかさず突っ込みを入れる狭山と津島だった。
「デートって言ったけれどよ」
「はっきり意識してるのね」
「だよな、だから今な」
「言っちゃったのね」
「うっ、今のはな」
言葉は出したらもう戻りはしない。しかしそれでも彼は言うのだった。
「あれだよ、錯覚だよ」
「錯覚!?」
「それだっていうの?」
「いや、この場合は幻聴だな」
こう言い換えた。途中でだ。
「今のは幻聴だよ」
「じゃあ俺の耳は空耳だったのか」
「私もだったのね」
一応話を聞くのだった。
「それだったのか」
「何かかなり強引ね」
「今のは全員幻聴を聴いたんだよ」
無理矢理そういうことにしようとする。
「それだったんだよ」
「ちゃんと録音してるから」
しかしだった。ここで椎名が言うのであった。
「はい、これ」
「げっ、携帯かよ」
「これにちゃんと録音したから」
そしてであった。その出してきた携帯のボタンを押すとだ。しっかりと先程の陽太郎のデートという発言が記憶されていたのであった。
それを聞かせながらだ。また言う椎名だった。
「言い逃れは無理」
「それは機械の故障だ」
今度はそういうことにしようとする。
「偶然俺の架空の声が入ったんだよ」
「凄い設定だね」
上から赤瀬の驚いた声がしてきた。
「何処をどうやったらそんな超絶設定になるのかな」
「超絶設定じゃない、事実だ」
その強引極まる主張は続く。
「俺は実際に」
「実際に違うから」
また椎名が言う。
「事実だから」
「うっ・・・・・・」
「大体よ。事実でもいいじゃねえかよ」
「そうよね」
狭山と津島がまた言う。
「何今更言ってんだよ」
「そうよ。大体察しがつくものだし」
「げっ、そうなのか」
言われてようやく観念するのだった。
「ばれてたのかよ」
「ああ、ばっちりな」
「誰がどう見てもね」
「そうだったのかよ」
そしてそれを言われてだ。困った顔になるのだった。心からそう言っているのがわかるものだった。
そしてだ。陽太郎はようやく観念してだ。こう言った。
「仕方ないな」
「ほれ、諦めろ」
「諦めても何にもならないし」
また言う二人だった。
「じゃあ六人だよな」
「皆で行くのよね」
「うん。六人」
その通りだと二人にも返す椎名だった。
「六人で行こう」
「よし、これで話は決まりだね」
また赤瀬が言ってきた。
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