第57話 ヴァンフリート星域会戦 中編
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・・・』
ラインハルトの目に映るのは、スクラップの群れでしかない艦隊であった。
「兎に角、総司令官命令は、脇目を振らずにイゼルローンヘ帰れとの事だ、卿も追従せよ」
『御意』
こうして、ヴァンフリート星系の戦闘自体は帝国軍の敗走で終了した、何故か同盟軍は追撃を行わずに逃げるに任せたのである。帝国軍残存艦艇はイゼルローンヘと向かった。しかし帝国軍には未だ地獄が待っていたのである。
その頃、突破直前で包囲網が閉じ脱出不可能と成り、艦体も機関も大破し総員退艦が命令され漂流するだけと成っていた旗艦ヴィルヘルミナでは、ミュッケンベルガー元帥が自室で最後の身支度を終えていた。
ミュッケンベルガーが覚悟を決めた頃、もう一人覚悟を決めた男がいた。今回参加しながら全く活躍の無かった、装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将である。彼はミュッケンベルガー元帥の部屋行き、ラッパ飲みのワインを投げ渡すと話しかけた。
「元帥、俺も付き合おう」
「卿は関係なかろう、降伏するべきだ」
「ふん。俺の渾名を知ってるだろう。ミンチメーカーだ。
そんな俺がおめおめと叛徒に降伏できるかよ!」
オフレッサーは頬の傷を撫でながら、ニヤリとする。
受け取ったワインを同じ様にラッパ飲みをしながら、
ミュッケンベルガーもニヤリとする。
「卿も、意外と頑固だな」
「お互い様だな」
「今回の件で前途のある者達を多数死なせてしまった」
「それで最後は自分と言う訳か」
「可笑しいかね?」
「いや、気に入った!卿の息子を儂の娘の婿に欲しいぐらいだ」
オフレッサーの話しにミュッケンベルガーが受け答える。
「婿養子か、それは困るな、跡継ぎが居なくなる」
「ガハハハハ、それなら子達に考えさせればいい」
「それで、卿はどうする?」
「俺か?俺は強襲揚陸艦で敵旗艦に突っ込んで総司令官ロボスの頸を土産に持ってくる」
「そうか、気を付けろよ」
「卿もな、オーディンの元で会おう」
そう言いながら手を振るオフレッサーを見送るミュッケンベルガー元帥であった。
「父上、母上、其方に参る時が来たようです」
その後部屋の鍵は内側から固く閉ざされ、ブラスターの銃声が響いた後、
その扉は二度と開く事は無かった。
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