120部分:第十話 夏に入ってその二
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第十話 夏に入ってその二
話を戻してだ。陽太郎に対して言うのだった。
「で、俺とか」
「嫌か?」
「男二人と行っても仕方ないだろ」
こう言う彼だった。
「そんなことをしてもよ」
「まあ普通はそうだよな」
「そうだろ?それだったら俺一人で行くさ」
「何言ってるのよ」
あらたな参戦者だった。絶好のタイミングである。
「一人で行くなんてそんなの許さないわよ」
「げっ、やっぱり御前かよ」
狭山が声がした方に顔を向けるとだ。そこにいたのはやはり彼女だった。
「あんたが他の女の子に色目使ったらたまったものじゃないわよ」
「あのな、俺がそんな男に見えるか?」
「どうかしら。男ってわからないし」
冷たい目で言う津島だった。
「案外ね。わからないわよ」
「わからないっていうのかよ」
「そうよ。行くのなら私も一緒よ」
今度は自分も行くというのだった。狭山の首を後ろからスリーパーホールドをしながらだ。そうしながら彼に対して笑いながら言うのだった。
「いいわね、その時は」
「いいとかそういうのじゃなくてな」
「何だってのよ」
「俺がそんな奴に見えるのかよ」
またそのことを言うのだった。自分にネックハンキングを仕掛ける津島にだ。
「そんなの色目使うようによ」
「だから男は皆狼だからよ」
「その言葉大昔の言葉じゃねえかよ」
「大昔でもそうだからよ」
言いながらまだスリーパーホールドを続けている。それは形だけだがそれでも狭山をしっかりと掴んで離そうとしない。全く外れる様子はない。
「あんたでもね」
「そうだっていうのかよ。意地でもよ」
「私が言ってるのは真実よ」
「真実じゃねえよ」
何時の間にか狭山と津島の話になっていた。
「あのな、俺はもてないんだぞ」
「今度はそう言うの」
「事実だよ。生まれてこのかたもてたことはねえんだよ」
かなり悲しい言葉である。しかしここであえて言うのだった。
「それに女の子に色目使ったらな」
「どうだっていうの?」
「それこそ姉ちゃんにぼこられるからな」
「姉ちゃん!?」
それに問うたのは陽太郎だった。
「姉ちゃんって。御前お姉さんいたのかよ」
「ああ、聞いてなかったか?」
「いや、初耳だぞ」
少し驚いた顔での言葉だった。
「そうだったのかよ」
「そうだよ。学校の先生やってるな」
「へえ、随分歳離れてるんだな」
「そうなんだよ、もう昔からな」
「奇麗な人よ」
狭山より先に津島が言ってきた。
「しっかりした人でね。面倒見もよくて」
「へえ、そうなのか」
「私も昔から可愛がってもらってるの」
「へえ、そういう人なんだ」
「あと実はこいつね」
スリーパーホールドを続けている相手への言葉である。
「実際は凄いお
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