12部分:第一話 最初の出会いその十二
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第一話 最初の出会いその十二
「お姉が八条高校受けるのって」
「何よ」
「そういうことが理由じゃないわよね」
こんなことを言ってきたのである。
「それじゃないわよね」
「何が言いたいのよ」
「だから。先輩でしょ」
屈託のない笑顔である。しかしその笑顔を前にした姉は気まずそうな顔になってだ。そのうえでケーキを食べながら話を聞いていた。
「斉宮先輩でしょ」
「ち、違うわよ」
顔を少し赤くさせてそのことを否定するのだった。
「そんな訳ないじゃない」
「本当に?」
「本当よ」
その赤らめさせた顔での言葉である。
「何で私はそんな理由で」
「あれっ、けれど皆言ってるわよ」
「皆って?」
「だからクラスの皆がよ」
言っているというのである。
「お姉が斉宮先輩のこと好きだって」
「それはデマよ」
「けれどあれじゃない」
姉が否定してもであった。妹はそれでも言うのであった。
「お姉いつも先輩見てるじゃない」
「気のせいよ、それは」
こうは言ってもであった。コーヒーを持つその手が少しどころか結構動いている。星子はその姉の右手を見てすぐに言ってきた。
「ちょっと待って」
「今度は何よ」
「そのまま飲んだら危ないわよ」
ここでは日常の言葉だった。
「零したら。熱いし」
「あっ、これは」
「だからわかるのよ」
星子はまたにこにことしてきた。右手に持つフォークで姉を指し示しながらまた言うのだった。
「お姉のことはね」
「何でわかるのよ」
「ほら、今言ったし」
「言ったしって?」
「わかるって言ったじゃない」
猫の様な顔になっての言葉だった。
「ちゃんとね」
「嘘よ」
星華は妹のその言葉をすぐに否定した。
「私そんなことは」
「言ったわよ。何でわかるって」
「うっ・・・・・・」
「思い出したじゃない。お姉って昔から嘘とか隠し事とか全然できないから」
「言葉に出るっていうのにね」
「顔にもね」
そちらにもだという。どちらにしてもそうしたことが極めて下手であるのは事実だというのだ。
「出るから」
「それはその」
「いいじゃない、それでも」
しかしここで星子の言葉の調子が変わってきた。
「それでもね。いいじゃない」
「いいっていうの?」
「先輩のこと好きなのよね」
「ええ」
「だったらそれでいいじゃない」
こう言って姉の言葉も考えも認めてみせたのである。
「それでね。八条高校に受かって通っても」
「いいの」
「私だって後から追いかけるし」
またにこにことした顔になって姉に話す妹だった。
「だからね。一年先に待っていて」
「ええ。だったら」
「お姉だったら絶対に上手くいくから」
「受験のこと?」
「それだけじゃないよ」
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