第16話 楽しみ
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はここで夕日が沈むのを見たいらしいのでまた戻ってきたのだ。
今はもう夕方、夕日は沈んでいっている。
子供たちが走りながら自分たちの家へと帰宅しているところを見ると、もう結構時間が経ったらしい。
「はー!楽しかったぁ…!」
「だなぁ…本当に、楽しかった」
新しい装備も手に入れたし、久しぶりにアイスコロッケを食べてグルメをしていた時を懐かしめたし。
決意もまたできたし…何よりも、また楽しみが増えた。
公園に着くと、ミラはオレに背を見せながら沈んでいく夕日を見つめていた。
やはりこの世界にきても夕日が見れるのは良かったと思う。何よりも綺麗だし、尊く思えるのだから。
何より、辛い時に見ると少しだけ励まされるような気分になれたりする。
そういえば昔に読んだ本の中に、夕日について語っていた。
夕刻の一時は一瞬であり、1日で最も少なく現れるもの。
けれどもその一瞬は美しく、一瞬一瞬を大事だと思えてしまう。
その言葉が好きで、今でも覚えている。一生懸命に頑張れると思えてしまう、そんな言葉。
夕日の照らす光は綺麗なのだが――その光が目の前の銀髪の少女の髪にも照らされ、より一層綺麗だと思った。
まるで夕日は彼女を綺麗にするためスパイスかと、そう錯覚してしまった。
そして、風は通り過ぎる。
寒くもない、暖かさを感じる。
そして風で少女の髪は靡かせ、それがまた絵を完成させられる。
オレは芸術だとか、そういう心得はない。だが、オレにとって目の前のこの光景こそ、芸術なのではないかと思ってしまった。
そして、夕日が沈んで夜になろうとしている。
だが空は紫色、夕日が去った空になった。
ミラは夕日を見つめ終わった後、こちらに振り返る。
振り返るミラの顔は先ほどの無邪気な笑顔ではなく、どこか心配そうに、そして悲しそうな顔をしている。
なぜ、そんな顔をするのか。
「ねぇ――レッドは、ちゃんと帰ってきてくれるの…?」
そう問われ、その返答に笑みを浮かべて迷わずに即答する。
それは偽りではなく、本心で。
「――たり前だろ。 オレの、オレたちの帰る場所が妖精の尻尾である限り、絶対に帰ってくる。それにオレはここが、皆がいる場所が好きなんだ。それなのにここから離れる要素はねえよ」
前世でのオレはどうなったかは知らない。
帰れるかも分からない。
恐らくオレは転生とやらを果たしたかもしれないし、今過ごしているこの瞬間は夢なのかもしれない。
だが、それでもオレはここが大切だったと言おう。
楽しい夢を見終わった後でも、覚えていなかったとしてもオレは「とてもいい夢だった」で終わる。
だが、
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