巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その五
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「よいな、そうして迎え撃つぞ」
「ううむ、では」
「殿の言う通りにします」
「槍を持ち兜を脱いで伏せまする」
「そうして敵を迎え撃ちます」
伊達の鉄砲騎馬隊をだ、家臣達は幸村に答えた。そして伊達家の軍勢が見えてきたそこで十勇士達が戻ってきた。
「後藤殿の軍勢無事に退けました」
「安全な場所まで」
「今は大坂城の方に向かっております」
「それで我等も戻ってきました」
彼等が退くのを助けていた彼等もというのだ。
「では今よりです」
「我等もです」
「殿と共に戦います」
「そうします」
「頼むぞ」
幸村はその十勇士達に強い声で応えた。
「ではな、拙者が言った時にな」
「まさにですな」
「正面から攻める」
「そうしますな」
「そうじゃ、それまでは伏せて動くな」
十勇士達にも伏せよと言うのだった。
「そしてじゃ」
「いざという時にはですな」
「一気に攻めてですな」
「敵を破れ」
「その様にですな」
「してもらうぞ」
こう言ってだ、そのうえでだった。
幸村は十勇士達にもすぐには攻めさせなかった、じっと動かず鉄砲騎馬隊が迫るのを待っていた。そして遂にだった。
鉄砲騎馬隊が目の前に来た、彼等を率いる片倉も真田の軍勢を見た。
「赤備えの武具に六文銭、間違いないな」
「はい、あれこそですな」
「真田家の軍勢ですな」
「武田家に仕えていた時からの赤備え」
「間違いありませぬな」
「うむ、今よりあの軍勢を攻める」
片倉は水色の武具と旗、伊達家のそれを見つつ兵達に答えた。
「我等でな」
「鉄砲騎馬隊で」
「我等で」
「撃って斬り込み」
「そうして決着をつけまするな」
「そうする」
まさにというのだった。
「よいな」
「そして真田殿の御首も」
「それもですな」
「挙げるぞ」
こう言ってだ、彼は自ら鉄砲騎馬隊を率いてだった。真田の軍勢に向かっていた。
幸村は近付いて来る彼等を見据えたまま軍勢を兜を脱がせたうえで槍を持たせて伏せさせていた、その状況にだ。
兵達はわからなかった、何故動かないのかをだ。
「来るぞ」
「鉄砲を構えておるぞ」
「それでもか」
「動いてはならぬのか」
「こちらは」
「気持ちはわかるがまだじゃ」
幸村自身も伏せていた、そのうえで兵達に言うのだった。
「まだ伏せておれ」
「そしてですか」
「殿の御言葉があるまで、ですか」
「動いてはならぬのですな」
「このままですな」
「そうじゃ、動かずにな」
そうしてというのだ。
「待っておれ、その時が来ればな」
「言われますか」
「どうすべきか」
「その時こそ」
「必ず言う、待っておれ」
是非にという返事だった。
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