巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その三
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「真田殿がおられる大坂方の軍勢とな」
「そして勝ちますな」
「そうしますな」
「無論だ」
片倉はまた答えた、そしてだった。
ここでだ、片倉は自身の彼達にこうも話したのだった。
「私が何故真田殿の奥方と子息、息女の方々のことを引き受けたのは」
「既にですか」
「真田殿との間に約があった」
「そうなのですか」
「うむ、父上に殿もあの方のことはよく知っておってな」
そうしてというのだ。
「いざという時は父上がな」
「あの方のご家族をですか」
「匿うと真田殿に文を送られていてな」
「そうしてですか」
「真田殿も諾とされていた」
それでというのだ。
「私が引き受けたのだ」
「左様でしたか」
「幕府もこうしたことは許してくれる」
敵将の家族を匿う、そうしたことはというのだ。
「そうしたことはな」
「それ位はですな」
「許してくれる」
「あの幕府も」
「何かと伊達家にも目をつけていますが」
「しかも殿がつてで事前に大御所様にしておいてくれた」
幸村の妻子を匿うこともというのだ。
「真田家の家臣の方々の妻子のこともな」
「他の家に入ると思いますが」
「当家以外の」
「そうした方々のこともですか」
「殿がお話をされていますか」
「だからこれ位はな」
敵将個人でなければというのだ。
「許してもらえたのだ」
「左様ですか」
「では真田殿のご家族は」
「このままですな」
「殿がお護りしますな」
「是非な」
こう話して実際にだった、幸村は彼の妻子達を匿うことを決めてそのうえで大坂に兵を進めていって後藤とも戦った。
そして次はだ、彼にとってその曰くの相手であった。政宗もそれはわかっていて戦の前に彼を呼んで問うた。
「よいか、次はな」
「はい、真田殿の軍勢とですな」
「戦じゃが」
それでと言うのだった。
「真田殿じゃ、だからな」
「それがしがですか」
「行かずともよいが」
「いえ」
すぐにだ、片倉は政宗に答えた。
「このことは」
「よいのか」
「それが武士だと思いますが」
整った毅然とした顔で答えた片倉だった。
「違いますな」
「うむ、武士ならば戦の場ではな」
政宗も片倉に毅然とした顔で答えた。
「その戦う相手が誰であろうとな」
「毅然として戦うものですな」
「策は用いても構わぬ、しかしな」
「槍を交えるならば」
「そこに卑怯未練があってはならぬ」
断じてという言葉だった。
「だからな」
「それで、ですな」
「そうじゃ」
まさにという返事だった、政宗のそれも。
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