巻ノ百三十九 鉄砲騎馬隊その二
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「このことは離れ離れになろうとも」
「いや、それはよいが」
「いえ、この生涯です」
竹が死ぬまでというのだ。
「私の夫はです」
「拙者だけか」
「この身に誓って」
「そう言ってくれるか」
「必ず」
竹も強い心の持ち主だ、この誓いは絶対のものだった。その誓いを幸村に約してそのうえで夫にさらに話した。
「そして戦には」
「必ずじゃな」
「お勝ち下さい」
「わかった」
確かな声でだ、幸村は竹に再び答えた。
「そうさせてもらう」
「それでは」
「その報仙台で聞いてくれ」
「この子達と共にですね」
今度は子達も見て言う竹だった。
「そうせよと」
「それが拙者の願いじゃ」
「わかり申した」
「それではな」
「これよりですな」
「他の家臣の家族も出る」
大坂をというのだ。
「そうしてな」
「他の地で、ですね」
「生きるからな」
「それでは」
「そなた達もな、達者にお暮らし」
優しい声で、であった。幸村は残る大助以外の家族の者達を送り出した。そうして彼の妻子達は彼の言った通りにだ。
身なりを粗末なものにし東に逃れた、そうしてだった。
伊達家の軍勢のところに行ってだ、文を出して言った。
「これを片倉殿に」
「片倉殿にですか」
「あの方に」
「はい」
顔を隠している竹が答えた。
「宜しくお願いします」
「わかり申した、では」
「その様にさせて頂きます」
伊達家の者達が応えた、そしてだった。
彼等はすぐにだった、片倉にその文を渡した。そして片倉はその文章を読んでから竹達を自分の前に案内して言った。
「ご安心召されよ」
「それでは」
「はい、これよりです」
まさにと言うのだった。
「貴殿等のことはそれがしが身を以てです」
「そうですか」
「仙台への案内役を出しますので」
それでというのだ。
「どうぞです」
「仙台までですね」
「送らせて頂きます」
こう言ってだ、実際にだった。
幸村の妻子は片倉の手の者達によって無事に仙台に向かうこととなった。片倉は竹達を送った後で彼の家臣達に話した。
「私の務めの一つであるからな」
「先程のことは」
「あの真田殿の妻子の方々をですな」
「保護することは」
「まさに」
「そうであるからな」
だからこそというのだ。
「すぐに仙台に送らせてもらった」
「そうしてですね」
「真田殿の憂いをなくしそうして」
「これより戦をする」
「そうしますな」
「うむ」
その通りという返事だった。
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