118部分:第九話 遠のく二人その十二
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第九話 遠のく二人その十二
「本当に楽しい学校だからね」
「それにしてもお姉って何だかんだで学校に馴染んでるよね」
「そうかしら」
「そうよ。けれど」
「けれど。どうしたのよ」
「ちょっと顔変わった?」
姉の顔を見ながらの言葉である。
「何か少し暗いものが入った感じだけれど」
「暗いって何よ」
その言葉を聞いてだ。眉を顰めさせて怪訝な顔で問う星華だった。
「何なのよ、それって」
「何となく思っただけだけれどね」
「思っただけなの」
「そうなの。けれどね」
「表情に出てるの?」
眉を顰めさせての言葉だった。ここでもだ。
「疲れとかが」
「疲れじゃないみたいだけれど」
星子は言いながら首を捻る。
「何かね。悩みとかある?」
「斉宮のことと勉強のことがそうだけれど」
「何か他にない?」
見れば妹も眉を顰めさせている。その顔で問うているのである。
「他にさ。何か困ったこととか」
「別に」
自分では気付いていないのだった。
「何もないけれど」
「そうなの。ないの」
「何かむかつくのはいるけれどね」
それはわかっていた。しかし気付いてはいない。ここに大きな違いが出ている。星華はわかってはいるのだ。しかし気付いてはいないのだ。
「それでもそういうのはないわね」
「むかつくのって?」
「うちのクラス委員よ。グズなのに融通が利かなくて」
「そんな人なの」
「その癖男にばっかり媚びてね」
月美のことである。今は実に忌々しげなか鬼なっている。
「もう最低。どうしようもない奴なのよ」
「そんなに酷いの」
「胸ばかり大きくてね」
「ちょっとお姉」
星子は姉の今の言葉であることに気付いた。それを指摘した。
「今のはないでしょ」
「ないって何がなのよ」
「胸は関係ないから」
それを言うのである。
「それは関係ないじゃない。そうでしょ」
「胸も関係あるわよ」
「いや、ないから」
星子はまた姉に突っ込みを入れた。
「性格と胸は別よ。だって私だって胸大きいじゃない」
「あんたは違うからいいのよ」
「いいって?」
「あいつと違うからよ。本当にむかつく奴なんだから」
「人の好き嫌いは仕方ないけれど」
星子はここで一旦姉の矛を収めさせることにした。とりあえずそうしないと話が収まらないと判断したからだ。そしてそれは正解だった。
「まあそれでね」
「それで?」
「今度はこっちどう?」
言いながらチョコレートクッキーを出してきたのである。その黒いクッキーが星華の目に入る。すると彼女の喉が思わずごくりと鳴った。
「それもあったの」
「お姉チョコレートクッキーが一番好きだもんね」
「クッキーでは一番ね」
話すその間もチョコレートクッキーから目を放さな
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