第71話『昏き雷鳴』
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「"夜雷"──解放」ピリッ
その瞬間、終夜の身体から大量の黒雷が迸る。それらは縦横無尽に宙を駆け、周囲の草も木も全てあっという間に焦がし尽くした。緑豊かだった草原は更地へと変わり、残されたのはウィズと烏天狗、そして黒々とした"何か"を、使えなくなっていた左腕に纏った終夜だ。
「そ、それが貴方の真の力かしら?」
「あぁ…そうだな。久しぶりに使ってみたが、やっぱり慣れねぇな…。気抜いたら暴走しちまいそうだ…」
焦りを垣間見せるウィズの問いに、全身を震わせながら終夜は答えた。
そう、これが"夜雷"の真骨頂、『夜間に強化される』というものだ。昼間と比べ、夜間の"夜雷"の威力は何倍にも高まる。しかしそれ故に代償も大きく、夜間に使い続ければ、次第に身体が雷に侵食され、焼かれていってしまうのだ。
「……やりなさい!」
『キエーッ!』ビュオオオ
僅かな躊躇いの後、ウィズは烏天狗に攻撃を指示する。直後、空を旋回していた烏天狗は手に持った団扇を大きく振るい、竜巻を起こした。それは大地を抉る程の威力で、終夜の元へ真っ直ぐに向かってくる。
「…悪いな」バリッ
『キ、エ……!』ブシャア
「嘘…!?」
巻き込まれたら一溜りもないだろう竜巻を、なんと終夜は雷によって一瞬で霧散させ、加えて烏天狗の団扇を持つ右腕をも破裂させた。烏天狗は情けなく喘ぎながら、切断面から血をまき散らして堕ちていく。
余りの威力に、ウィズは開いた口が塞がらなかった。
「なんて威力…!?」
「お陰で制御はあんまり効かねぇぞ。死にたくなけりゃ、大人しく尻尾巻いて帰りな」
「ま、まだ召喚はいくらでもできますわ。"絶氷を支配する悪魔に告ぐ。我が呼びかけに答え、現界せよ"」ヴォン
ウィズは更なる召喚を試みた。悪魔クラスの召喚を何度も行えるなど、まさに魔女の所業ではある。が、
『グオ──』
「うるせぇよ!」バリッ
「そんな…!」
もはや瞬殺。悪魔の姿を確認する間もなかった。終夜の黒雷は今や、触れるもの全てを焦がし尽くす天変地異そのものなのだ。
「次は・・・お前の番だぜ」
「ひっ…!」
「跡形も残らねぇよう消して・・・がはっ」
「な、何ですか…?」
突然の終夜の吐血に、ウィズは動揺を隠しきれない。
しかし見ると、先程まで左腕にしか無かった黒い何かが、終夜の顔半分にまで侵食していたのだ。終夜は荒い呼吸を繰り返し、見るからに疲労を露わにしている。
「それが、"暴走"なんですね…?」
「あぁ…。完全に侵食される前に…てめぇだけはぶっ倒しとかねぇと…」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ終夜
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