114部分:第九話 遠のく二人その八
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第九話 遠のく二人その八
「何かね」
「居心地悪いの?」
「それもあるけれど」
それもだというのだ。
「今のクラスいないから」
「ああ、いないの」
「そうよ、いないのよ」
困った顔での言葉だった。
「どうしたものかしらね」
「先輩のことは仕方ないじゃない」
「私何も言ってないわよ」
目を少し座らせての返しだった。
「何もよ」
「あの、言ってるから」
しかしここで星子は楽しげに微笑んでだ。そうして言ってみせてきた。
「もうね」
「言ってるって」
「だから。いないって言ったら丸わかりじゃない」
だからだというのだ。
「それでわからない筈がないわよ」
「うう・・・・・・」
「まあお姉」
また言う星子だった。
「それはもう考えても仕方ないじゃない」
「仕方ないの」
「何なら剣道部にでも移る?」
こんなことも言ってきたのである。
「バスケ部から。どうするの?」
「どうするもそんなことする訳ないじゃない」
星華は口を尖らせて言い返した。
「私はバスケ部よ。それ以外の部活をするつもりはないから」
「ないでしょ。剣道部に先輩がいてもね」
「中学だと同じ体育館使ってたのに」
今度は口を尖らせる星華だった。
「それが、今は」
「それは仕方ないじゃない。今の中学校と八条高校は全然違う学校なんだから」
「それはそうだけれどね」
「だから仕方ないじゃない」
星子の言葉は続く。
「それはね」
「うう、確かに」
「それで焦ったり疲れてもはっきり言って無駄よ」
「無駄なのよ」
「そんなに気になるんだったら」
そしてだ。姉に告げる言葉は。
「もう体当たりしたら?思い切ってね」
「ちょっとあんた」
妹の今の言葉にはだ。少し怒った顔で返した。
「そんなことできる訳ないじゃない」
「私だったらできるけれど」
「あのね、つまり告白よね」
「そうよ」
「そんなこと出来る筈ないじゃない」
口も開いている。そうしてだった。
「全く。何言ってるのよ」
「やれやれ、その度胸もないの」
「何よ」
「お姉は胸もなければ度胸もない」
わざと肩を竦めさせて笑っての言葉だ。
「本当に何もなし」
「胸は関係ないじゃない」
「まあね。胸がなくてもそれでもそれが好きな人はいるし」
「いるの」
「いるわよ、ちゃんとね」
しかしこう言う星子の胸はかなり大きい。少なくとも姉のそれよりは遥かにだ。だからといってその大きさを誇示するということはしていない。
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