101部分:第八話 ファーストデートその九
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第八話 ファーストデートその九
「それじゃあね」
「はい、それでは」
こう話して映画を観る。映画は所謂亡霊を扱った映画だった。それを観たのである。
観終わってからまたアーケード街を歩く。その中でだ。
陽太郎はまた自分から月美に対して言ってきた。
「じゃあ次はいよいよ」
「はい、あのお店ですね」
「パン屋さん。西堀のその贔屓の店だよな」
「とても美味しいですよ」
満面の笑顔でその店のことを言うのだった。
「もう一口食べればそれだけで」
「狭山と津島も言っていたしな」
彼女だけではないのだった。しかしである。
そのうえで一旦アーケード街を出ることになった。電車に乗るのだった。
電車の中で二人並んで座ってである。そこでも話すのだった。
「なあ。それでだけれどさ」
「はい」
「そのお店って津島の親戚の人のお店だったなんてな」
「奇遇ですよね」
「ああ、本当にな」
それを言うのだった。電車の中でもくつろいでいる二人だった。
「しかしこの辺りってな」
「色々なお店ありますよね」
「そうだよな。ほら、山月堂とかさ」
その店の名前も出るのだった。
「あの店のケーキも美味いよな」
「本来は和菓子屋さんですけれどそれでもですよね」
「あのお店のお菓子って八条百貨店にも売ってるしな」
「そうですよね。何か百貨店の重役の人が特別に頼んで入れてもらってるそうで」
「ああ、そうなんだ」
「はい、母があの百貨店によく出入りしていまして」
ここで月美は母親のことも話に出した。
「それで百貨店の人がお家に来ることもあります」
「へえ、西堀の家ってそういう人も来るんだ」
「そうなんです。それで」
「わかったんだ。あの百貨店って品揃えいいけれどさ」
「そうですね。とても」
「やっぱり努力もしてるんだな」
腕を組んで言う陽太郎だった。
「最近百貨店も厳しいけれどな」
「はい、それでその重役の人の娘さんと山月堂の息子さんが婚約者同士らしいですよ」
「婚約者って。何かそれって」
「いいですよね」
陽太郎は政略結婚を見ていたが月美は違っていた。
「そうした相手がいてくれるって」
「ま、まあそうかな」
言おうと思ったが月美の晴れやかな顔を前にして言えなかった。
「それはさ」
「そう思います。その山月堂ですけれど」
「ああ」
「私あそこのお菓子も好きなんですよ」
笑顔は今度はにこりとしたものだった。
「上品な美味しさですよね」
「そうだよな。あの甘さってな」
「そうですよね。それでなんですが」
「それで?」
「今から行くお店の美味しさも凄いんですよ」
「そういえばお菓子も作ってたんだっけ」
陽太郎は話をしているうちにこのことも思い出した。
「じゃあお
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