第二十四話 逆鱗
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のにするのは危険だと”
“……”
“早く行った方が良いと思うね、私が想像して楽しむだけじゃ物足りなくなって本心からクーデターを起こしたいと考える前に。クーデターは何時でも起こせるんだから……”
公の声には笑いの成分が有ったけど目は笑っていなかった。フェルナー大佐も冗談ではすまないと分かったのだろう、“早まるなよ”と言うと慌てて部屋を出て行った。公はそれを見送ると詰らなさそうに文書に視線を戻した。
公がフェルナー大佐を脅した効果は直ぐに出た。その日の夜、宮中で行われた戦勝祝賀パーティ、多くの出席者がチラチラとブラウンシュバイク公を見て笑いを堪える中、皇帝が最初に声をかけたのは公だった。
“昼間、公にかけた言葉は決して公を侮辱するものに有らず、不快な思いをさせたようだが許せよ”
“はっ”
“公は皇家の重臣、今後とも帝国の藩屏としての働きを期待して良いか?”
“はっ、御期待に添うように努めます”
“うむ、先ずは祝着。聞くところによればエリザベートと正式に婚約したと聞いた。重ね重ね祝着じゃ。公なれば我が孫娘を託せよう、これ以後は公は皇族に等しい身となる、宜しく頼むぞ”
“はっ”
皇帝フリードリヒ四世がブラウンシュバイク公に最初に声をかけた。昼間の一件を謝罪し、公を帝国の藩屏と認めた上でフロイラインとの婚約を祝福した。そして皇族に等しいと言ったのだ。その意味が分からない人間など帝国には居ないだろう。
皇帝といえどもブラウンシュバイク公の扱いには気を遣わざるを得ない、そう言う事だ。これまで何処かで平民上がり、所詮は養子と公を軽んじていた人間達も改めて公が帝国の最重要人物なのだと理解したはずだ……。
「あまりお気になさる事は無いと思います。結果的には良い方向に動きました。公の御立場は以前よりも遥かに強まったはずです」
「そうかしら、中佐の言う通りだと良いのだけれど……」
「……」
大公夫人は懐疑的だ。多分、その事に一番懐疑的なのがブラウンシュバイク公自身だろう。フェルナー大佐が溜息を吐いた。私も溜息が出そうになったけど慌てて堪えた。大佐、貴方はブラウンシュバイク公爵家の家臣失格よ。フロイラインも大公夫人も呆れたような表情で貴方を見てる、後でこってりと絞られなさい……。
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