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銀河英雄伝説〜美しい夢〜
第二十四話 逆鱗
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してくれるよな?”

懇願する様な口調だった。額から汗が流れている。ブラウンシュバイク公は静かに笑い声を上げた。視線は文書に落としたままだ。嫌でも怒っているのが分かった。雷鳴近づく、そんな感じだった。

“理解しているとも。だからこうして仕事をしている。そうでなければクーデターの準備でもしているさ、満座の中で恥をかかされたんだからね。そうだろう、アントン・フェルナー”
“エーリッヒ!”
悲鳴のような大佐の声だった。

“エリザベートを傀儡の女帝として私が全てを牛耳る。幸い正規艦隊の司令官は未だ決まっていない。このオーディンで最強の武力集団を率いるのは私とミューゼル大将だ。話の持って行き方次第ではクーデターは可能だ、そうは思わないか”
“馬鹿な事を考えるな!”

その声に公はようやく視線を大佐に向けた。鋭い視線だ、とても冗談を言っているようには思えない。気が付けば身体が震えていた。

“そうかな、馬鹿な事かな。地上戦力ではリューネブルク中将の装甲擲弾兵第二十一師団がこっちの味方になるだろう。先手を打てばオーディンを占拠するのは難しくない。憲兵隊は、……憲兵隊は割れるだろうな、だがそれなら連中は動けない、クーデターは十分に可能だ”
“……おい、お前”

震えは益々酷くなった。フェルナー大佐と私が固まる中、公が笑い出した。楽しくて仕方がないといった感じの笑い声だ。

“後世の歴史家は何と言うかな。ブラウンシュバイク公が反逆したのはカワイイの一言が原因だった。世にこれほど馬鹿げた理由で反逆した人間は居ないだろう、かな。それともこれほど馬鹿げた行為で臣下を反逆させた皇帝はいないだろう、かな。どっちだと思う?”
“……エーリッヒ”

“決意の言葉は我慢ならん、かな。いっその事この時を待っていたにしてみるか……。いかにも反逆者らしい科白だ、歴史家達が喜ぶだろう。エーリッヒ・ヴァレンシュタインは用意周到に反逆の時を待っていた、皇帝はそれに口実を与えてしまった……”  
“……”

“安心していい、クーデターなどしないよ。私は権力なんか欲していないからね。それに今クーデターを起こしても不安定な政権が出来るだけだ、碌な事にはならない、それが分かる程度には私は落ち着いているよ。でも少しぐらい想像するのは良いだろう、私にも楽しみが有っても良い筈だ”
“俺をからかったのか”

フェルナー大佐の抗議に公が肩を竦めた。

“からかった? いいや、忠告だよ、これは。アントン、早くブラウンシュバイク公爵邸に戻るんだね。そして皆にブラウンシュバイク公は反逆しかねないほど怒っていると伝えた方が良いと思う”
“俺にそんな事を言えと言うのか”

“言ってもらう、卿は私の親友なんだ、私を一番知っている人間が伝えるべきだと思うよ、私を笑いも
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