第二十四話 逆鱗
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務めて分かった事が有る。公は自分が虚弱な事にかなり強いコンプレックスを持っている、体格が華奢である事にも強い不満を持っている。もしあの一件が無ければ今日は素直に休んだのではないだろうか……。あれは間違いなく公の逆鱗に触れたのだ。
もしかするとフェルナー大佐も同じ事を考えているかもしれない。無表情に黙っている大佐を見て思った。でもそれをこの場で言う事は出来ない。そんな事をすれば大公夫人とフロイラインを益々悲しませる事になるだろう。貴女達は養子を、婚約者を激怒させたのです……、そんな事とても言えない。フロイラインは泣き出してしまうだろう。
「それに戦場では熱が出ても指揮を執らねばならない時が有ります。前回の戦いでも、イゼルローン要塞の攻防戦でも公は病身を押して指揮を執りました」
「……」
うーん、まだ納得はしていないか……、無理も無いことではある、私だって説得力の無い説明だと思っている。
「ここ近年、帝国は有利に戦争を進めていますが戦争で勝つと言う事は決して簡単な事ではありません。ブラウンシュバイク公は小官の知る限り帝国でも屈指の用兵家です。ですがその公ですら勝利を得るためには非情な苦労をされておいでです」
「……そうですか」
大公夫人がまた溜息を吐いた。そして許しを請う様な表情で話しだした。
「悪気は無かったのよ。私達には男の子が居なかったし、妹の所にも居なかった……。息子が出来て嬉しかったの。優秀で頼りがいが有るし、それにカワイイんですもの。ついつい構いたくなってしまって……」
「はあ」
ちらりとフェルナー大佐を見た。大佐は無表情にコーヒーを飲んでいる。なんとか言ってよ、貴方親友でしょ。大体コーヒー飲んでるってどういうこと? 結構余裕じゃないの。ふてぶてしいのは美徳じゃないわよ、大佐。
「それでついお父様にもカワイイって言ってしまったの……。まさかあんな事になるなんて……、あの子を困らせるつもりは全然無かったし侮辱するつもりも無かった……、ただちょっと構ってみたかったの、今考えれば馬鹿な事をしたと思うけど」
「……」
その気持ちはとっても良く分かる。何処の家でも母親なんて似た様なものだろう。息子が可愛ければ可愛いほど構いたくなる。ましてその息子が有能で無鉄砲なのに虚弱でカワイイとなればなおさら構いたくなるだろう。嫌がる顔を見る事さえ楽しいに違いない。
でも困った事に公爵閣下はカワイイと呼ばれるのが何より嫌いなのだ。公は母親似らしい、母親の事は慕っているようで顔には不満は無いらしいがその事でカワイイと言われるのには我慢出来ずにいる……。まあ私が言わなくてももう分かっていると思うけど……。
先日、十三日に行われた元帥杖授与式、あれは悲惨な結果に終わった。おそらく、あの式典に参列していた殆どの人間が
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