暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
Alicization
〜終わりと始まりの前奏〜
夜鳴
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してきた簡易のコーヒーメーカーを、埃でうっすらコーティングされたデスクの上に置く。
ぶびー、という気の抜けるような音をBGMとして聞き流しながら、相馬は別の端末を手に取った。
「……ふーん、EU諸国に点々と置いておいた研究所はあらかた使えなくなったか。まぁ、今の情勢ならそらそーだわな」
『東西冷戦なんてメじゃない勢いだにぇー。バルカン半島も真っ青の勢いで火花散らし合ってる』
「だが、四方八方仮想敵としてるんじゃドイツの二の舞だ。遠からず二極化するだろうな」
黄金を生むガチョウを自国の利益のために保護するか、それとも均衡を思って排斥するか。
どちらにせよ腹黒い謀略があるが、それ以前に四面楚歌は子供でも分かるバカのすることだ。リスクヘッジとしてある程度のまとまりは出てくるだろう。
相馬はサーバーからカップに注いだインスタントなコーヒーを不味そうに啜る。
「擁護派の中心はフランス。……まぁ、
指向性音響兵器
(
ミンストレルパラノイア
)
に相当小躍りしてたからな。それにオーストラリアなどのオセアニア、中東諸国、アフリカの一部小国も含まれる、と」
『排斥派は多いねー。イギリスが音頭とって、ロシアが名乗り上げたのがデカいのかにゃ。恨まれてるねーアナタは』
にゃーにゃーほざくバカはガン無視することにして、相馬は端末の報告書をスクロールしていく。
辛酸を嘗めさせられたノルウェーは言わずもがな。アメリカは直近のキューバが擁護派のために慎重な立ち位置を強いられているようだ。中国は利益優先のどっちつかずのコウモリになる見通し。そしてアジア圏はそんな中国の出方を窺うように座視する姿勢らしい。
「だいたい予想通りか」
『ノルウェーがロシア巻き込んで相当キてるよー?安保理もマトモに機能してないだろうし、こんな状況で《
本体
(
オリジナル
)
》を解凍するのはいかがなモンかねーと思ってみるよん』
「こういう時だからだよ。ノルウェーの一件で
代替身体
(
おれ
)
を殺しても何の痛手にもならないと世界も分かってる。交渉や駆け引きで最大の武器は真実だ。
代替身体
(
クローンドール
)
じゃない、混じりっけないオリジナルの俺を今盤上に出しただけで、否が応でも動くしかなくなるんだよ。俺を巡って世界が二極化する現状は予想通りの想定通りではあっても、理想通りじゃない。国同士でいがみ合って、それでも互いに最後の一線を律儀に守って緊張のという名の硬直状態な現状は、まったくもって不都合だ」
小日向相馬は自然に笑う。
冷酷でも酷薄でもなく、ただ朗らかに笑う。無知なる愚笑ではなく、全てを見通す智笑を貼り付ける。
「もうすぐだ。もうすぐ、《アカシック・レコード》も《Gコード》も《ソノブイ》も《ダミー・レコード》も――――全部全部全部、繋がる」
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