巻ノ百三十八 仇となった霧その十一
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「よいな」
「わかり申した」
旗本も頷いた、そしてだった。
旗本はすぐに幸村に一礼し後藤の軍勢かろうじて生き残った彼等のところに戻った。その彼を見送ってからだった。
幸村はあらためてだ、大助に言った。
「聞いたであろう」
「はい、後藤殿はご無事ですな」
「もうこの度の戦では戦えぬが」
「傷は深い様ですな」
「しかしじゃ」
それでもと言うのだった。
「ご無事じゃ」
「だからですな」
「ここはじゃ」
まさにというのだ。
「このことを幸いとしてな」
「若しもですか」
「また後藤殿の御力が必要な時はな」
「その時はですか」
「ご助力を願おうぞ」
「そうしますか」
「うむ、後藤殿がよいと言われればな」
その時はというのだ。
「そうしようぞ」
「わかり申した」
「そしてじゃが」
「我等はですな」
「先に話した通りじゃ」
「先に進み」
「そして戦うぞ」
幕府の軍勢、彼等とというのだ。
「おそらく伊達家の軍勢とな」
「そしてその軍勢は」
「鉄砲騎馬隊がおる」
その彼等がというのだ。
「そしてかなりの強さであるが」
「それでもですか」
「拙者に策がある」
「父上に」
「それで戦うとしよう」
「そうされますか」
「うむ、しかし今日はな」
苦い顔になりだ、こうも言った幸村だった。
「諦めるしかなくなった」
「大御所殿の軍勢との戦は」
「そして大御所殿の御首を取ることはな」
それはというのだ。
「後藤殿がおられぬのでは」
「そうですか」
「それは適わなくなった、明日じゃ」
「では」
「明日間違いなく幕府の軍勢は大坂城の南に来る」
「そこに布陣してですか」
「攻めて来る、そこにじゃ」
まさにその大坂城の南にというのだ。
「大御所殿もその軍勢と共にじゃ」
「おられて」
「そうしてな」
「そのうえで、ですか」
「攻めて来られる、そこでじゃ」
「我等はですか」
「一気に攻めてじゃ」
「大御所殿の御首を」
まさにと言った大助だった。
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