巻ノ百三十八 仇となった霧その八
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「しかし殿をですか」
「うむ、助けて欲しい」
「殿と共に生きてくれ」
「また時が来るやも知れぬ」
「その時に備えてな」
「わかり申した」
ここでだ、長沢は彼等に対して頷いて応えた。
「では」
「お主の馬は大きい、殿のお身体も運べる」
「殿の具足と槍は我等が預かる」
「殿の具足と槍は我等が命にかえても護る」
「だから再び落ち合った時にな」
「殿にお渡しするからな」
「お主は殿ご自身を頼んだぞ」
家臣達が長沢が運びやすい様に後藤の具足と槍を預かった、長沢もここは刀以外の武具を外して戦の場に置いてだった。
身軽になりそうして気を失っている後藤を己の馬の背に乗せてだった、そうして他の者達にまたと別れの言葉を告げてだった。
馬を走らせた、後藤を乗せた馬は瞬く間に彼方へと消え去った。
それを見届けてだ、残った者達は戦った。
「ではな」
「うむ、我等もすべきことをしよう」
「残った兵達をまとめ退くとしよう」
「そして真田殿、毛利殿の軍勢と合流しよう」
「使者も出してな」
「殿のこともお話しよう」
こう話してだった、彼等は実際に兵をまとめてだった。
戦の場から退いた、その頃には正午になっており霧も晴れていた。その為幸村と毛利の軍勢にそれぞれ使者を送ることが出来たが。
霧が晴れて兵を率いつつだ、幸村は苦い顔で言っていた。
「この霧はな」
「はい、それがしの力が及び中では消せましたが」
霧隠が言ってきた。
「霧があまりにも深く広くあったので」
「それでじゃな」
「全ての霧は晴らせませんでした」
如何に霧隠といえどだった。
「とても」
「よい、これだけの霧はな」
幸村は申し訳なさそうに言う霧隠を慰めて言った。
「どうにもならぬわ」
「そう言って頂けますか」
「それよりも今はじゃ」
「はい、一刻も早くです」
筧が言ってきた。
「前に進み」
「そうしてじゃな」
「毛利殿の軍勢と共にです」
「後藤殿の軍勢とじゃな」
「合流してです」
そのうえでというのだ。
「共に戦いましょう」
「そうじゃな、おそらく後藤殿はな」
「今はですな」
「激しい戦に入っていてじゃ」
「敵の数は多いです」
海野も言ってきた。
「ですから」
「危うい状況におられるわ」
「だからこそですな」
「急ぐぞ、しかし後藤殿の星を見たが」
幸村はこのことも話した。
「この戦では命は落とされぬ様じゃ」
「では殿、あの方は」
「命はご無事じゃ」
穴山にも話したのだった。
「そのことは安心してよい」
「そうなのですな」
「急がねばならんがな」
「そのことはよいですな」
「我等にしてもな、しかし急ぐぞ」
「無論です、急がねば」
今度は根津が言ってきた。
「それで
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