67部分:ローゲの試練その二十一
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ローゲの試練その二十一
「途中までイドゥンの研究、開発に協力してくれていたのだが。資料を持って逃亡してな」
「それは聞いている。災難だったな」
「そして彼女を探していたのだが。意外なことになってな」
「救援依頼か」
「罠だとも思ったが。私は行った」
「だが彼女は既にホランダー達によって殺されていた」
「私は命だけは救われたが。長老をバイロイトで救ったことがあった縁でな」
「ミーメの研究からだな」
「その通りだ。だが牢獄に幽閉されることになりその牢獄に卿の死体があった。腐臭に耐えられないので」
「イドゥンを使ってくれたのだな」
「そうだ」
「そうだったのか。あらためて礼を言おう」
ローエングリンは頭を下げた。
「おかげで。戻って来ることができた」
「いや、礼はいいさ。私も耐えられなかったからな」
「私の匂いにか」
「今もまだ匂っているぞ」
「そうか。それは参ったな」
ローエングリンはそれに応えて苦笑した。
「ではどうしようか」
「香水とかは持っていないな」
「生憎な。基地に置いてきた」
「そうか。ではここから出るしかあるまい」
トリスタンは言った。
「脱出するぞ。いけるか」
「この程度の牢獄ならな」
ローエングリンは何気ないといった様子でこう返した。
「造作もないことだ」
「ほう」
「伊達に軍にいるわけではない」
言いながら懐から何かを出した。
「これで。どうにでもなる」
それは一本のナイフであった。それで牢獄の扉のつなぎ目を切る。
「これでいい」
「大したナイフだな」
「特殊部隊用のナイフだ」
ローエングリンは言った。
「他にも色々と使える。便利だぞ」
「そうか、ではここから出たら一本もらいたいな」
「そのかわり高いがな」
「何、金ならあるさ。それに」
「それに?」
「命を救った代償として。一本欲しいな」
「ここから帰れたらな」
ローエングリンは笑ってこう述べた。その笑みは先程の苦笑とはまた変わっていた。
「それでいいか」
「うむ、では行くぞ」
「わかった、ではな」
彼等は牢獄を出た。その途中で全ての牢獄を開け、そこにいる生き残りの部下達を救い出した。そしてサイレンと銃撃の中を何とか潜り抜けホランダー達の基地を脱出した。ローエングリンとトリスタンは何とか死地から逃れることが出来た。基地に帰った彼を待っていたのは思いも寄らぬ言葉であった。
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