第十一章 遥か、はるか
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で、マジックジェネレーターをフルスロットル始動させてパワーアップしたじゃないか!」
また、なんだかわけの分からないことをいい出したよ。
なんだよ、メカマジョって。つうか、お前の脳味噌だろ、フルスロットル迷惑全開なのは。
そんな怪訝そうな迷惑そうな、祐一の露骨な表情にもてんでお構いなし、敦子は彼のすぐそばに立つと、叫びながら両腕を高く振り上げた。
「ワン ツー ワンツースリーフォー! じゃじゃじゃじゃじゃーーん」
両腕をすっと下げて、両の拳を祐一の眼前数ミリのとこにまで突き出した。
プチリ、と祐一の脳の血管が切れ掛かる。
「ハイパーキー! マジックジェネレーター始動フルスロットル!」
右の二の腕に、鍵を差し込んで回すような仕草、腕と身体をぶるんっと震わせた。
「新変身シーンはあ、この捻った瞬間の、ぶうんって高く低く震えるアクセル全開な感じがミソなの」
「ミソでもなんでもいい。出てけえ!」
ついに、切れた。
うおおお叫びながら、ソファから立ち上がるや否や敦子の脳天に空手チョップ。ぐらりよろけた彼女の胸に、水平チョップを連打。
スエットの布地をがっしと掴み、ソファ目掛けてブレーンバスターで叩き付けると、ううーんとのびてる彼女に容赦なくパワーボムで追撃。
ダンゴムシのように丸まっている妹の身体を、そのままゴロンゴロンと転がして、部屋から追い出しドアを閉めた。
「ふーっ」
虚しい勝利に、虚しいため息。
どうせ三十秒もしないうちに、何事もなかったようにまた戻ってくるのだから。
さすがクイズ番組好きというべきか、その予想、大正解であった。
5
湯気のもうもうけむる中、沢花敦子は湯船の中で横たわるように身体を浅くして、鼻のすぐ下までお湯に浸かっていた。
珍しく、眼鏡を外した敦子である。お風呂なので当然だが。
ふと思い出したように、右手を後頭部にあて、なでた。
「いやあ、さっきはまいったなあ。壁にゴツンと思い切りぶつけちゃったからな。もう痛みはないけど心配だあ」
兄に魂全力のブレーンバスターをかけられていたことの方が、よほど心配事な気もするが。
「ふいーーーっ」
どんどん浅い角度になって沈んでいく上半身を、いったん起こすと、浴槽の縁に肘をかけて、長い息を吐いた。
気持ちは、だいぶ落ち着いた。
お風呂に入り、湯船に浸かったことで。
つい先ほどまでは、本当に酷い状態だったのだから。
あたふた狼狽してレンさんたちにメールを送ったかと思うと、今度はどんより鬱のような状態になってしまって。
まだ、悲しみが癒えたわけではないが。
なんの話かというと、つい先ほどまで観ていた今週の「魔
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