第一章
[2]次話
避けられない結末
この時潘金蓮は心の底から安堵していた、自分が言い寄ってからこの上なく疑念を抱き警戒していた夫武大の弟であり虎殺しで知られている武松が流罪になったからだ。
後は愛人である西門慶と共に夫の武大を毒殺し葬式の後で西門慶の妾に収まった。そのうえで。
西門慶の他の妾達とその座を争いつつ贅沢三昧の生活に入った、彼女の待ち望んだ生活がそこにあった。
だがある日だ、遊び暮らしている金蓮が街に出た時に一人の易者にこう言われた。
「若し、貴女は」
「何だい?」
「ふむ、難の相が出ておりますな」
「難の相だって?」
金蓮はその美貌の顔を顰めさせて易者に聞き返した。
「どんな難だい、それは」
「昔何か悪いことをしましたかな」
「覚えないないね」
これは嘘だった、武大のことであるのはすぐに察しがついたがそれを言うつもりは毛頭なかった。言えばどうなるかわかっているからだ。
「これでも真面目に生きてるんだよ」
「そうですか、しかし人は生きていれば必ず罪を犯すもの」
「それでその罪でかい」
「報いを受けるとです」
「あたしの顔には出ているのかい」
「これは剣難ですな」
それだというのだ。
「それにお気をつけ下さい」
「剣難?縁がないね」
金蓮は全く心当たりがなく笑って応えた。
「そんな話は」
「そうですか、しかしです」
「あたしの顔に出ているってんだね」
「はい、ですからお気をつけを」
易者はこう金蓮に話した、金蓮はこの易者を馬鹿なことを言うへぼ易者だと思っていた。だが気にはなったので。
屋敷に帰り西門慶と床を共にした後でだ、あの男のことを聞いた。
「前の亭主の弟はどうなったんだい?」
「武松だったか?あの大男か」
「ああ、あいつはどうなったんだよ」
「あいつなら孟州に流されてな」
「そのままだね」
「死罪にはならなかったよ」
「何だい、生きてるのかい」
流されただけかと聞いて苦い顔になった金蓮だった。
「死罪にされたらいいのに」
「俺もそう働きかけたんだがな」
「死罪にはかい」
「ああ、牢の方じゃあいつは受けがよくてしかも世間の評判もよくてな」
「虎退治の豪傑だからだね」
「それでだよ」
そうしたことがあってというのだ。
「あいつは死罪にならずにな」
「流罪かい」
「それであっちにいるよ」
そうだというのだ。
「まあこっちに来ることはないな」
「そうか、まあ戻らないならいいさ」
死罪になっていないのが残念だがそれでもとだ、金蓮は木を取り直して述べた。
「それでね」
「ああ、じゃあもう一回するか」
「それじゃあね」
こうしたことを話してだ、そうしてだった。
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