第五章
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「御前さんみたいにな」
「それでか」
「ああ、あの山に入ってな」
「いないことを確かめようとしてか」
「あの時わしは犬達だけだったがな」
人は自分だけだったというのだ。
「それで山に入ったがな」
「そこでか」
「ああ、あの鳥居のところで犬達が動かなくなってな」
そうなったというのだ、あの時と同じ様に。
「そうしておかしく思っていたらな」
「あの鳴き声が聞こえてか」
「あいつを見たんだ」
あの山の神をというのだ。
「それでだ」
「いるってわかったんだな」
「そうだった、そしてな」
それでというのだ。
「いるってわかったからだ」
「おらを止めてか」
「ついて行ったんだ」
「そうだったんだな、しかしな」
「ああ、もうだな」
「あの山には入らないからなおらも」
こう悟作に言った、それも確かな声で。
「最悪でもあの鳥居から先はな」
「ああ、そうした場所もあるんだ」
「神様の場所がな」
「そして神様っていっても色々でな」
「ああした神様もいるんだな」
「そうだ、よくわかったな」
悟作は震えていた、その神を再び見たからに他ならなかった。
「これで」
「ああ、おらが最初に気付いたのはな」
「犬だな」
「犬が絶対に行こうとしなかったからな」
鳥居から上にだ、立ち止まってだ。
「そうしていたのを見てな」
「おかしいと思ったな」
「犬ってのは鋭いからな」
人間よりもというのだ。
「鼻に耳にな」
「勘もな」
「やばいものは見分けるからな」
「その犬達が行こうとしなかったからだな」
「おらもまずおかしいって思った」
「そうだ、犬が行かない様な場所はな」
それこそと言う悟作だった。
「絶対にだ」
「行くべきじゃないな」
「おめえはそれはわかっていた」
「だから助かったのか」
「若しあそこで行こうとしたらわしが殴ってでもだ」
そうしてでもというのだ。
「止めていた」
「そうだったんだな」
「そうだ、しかしおめえはあそこでおかしいと思った」
「だからぶん殴りもしなかったんだな」
「そうだ、それだけおめえは賢いってことだ」
犬が行かない、怯えて上の方を見ているのを見て気付いたことだけでというのだ。
「それで助かったんだ」
「そうなんだな」
「これからもな、危ないっていう場所には入らないでな」
「犬の動きもだな」
「そういうのも見ろそうして猟師をやっていけ」
これからもというのだ。
「あの時のことを忘れずにな」
「忘れられるわけないだろ」
あの神、異形のその姿と声を思い出しての返事だった。二人を見ているその目は真っ赤で不気味に輝いていたのも思い出した。
「あんなのは」
「わしもそうだ、じゃあな」
「ああ、もうあの山のあそこから
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