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入らない場所
第二章

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「それでいいな」
「男に二言はないだろ」
「わかった、じゃあ次の猟の時はだ」
「一緒に行こうな」
 その荒神山にというのだ、こうしてだった。
 権作は悟作と共に荒神山まで猟に行くことになった、二人はそれぞれの犬達を連れてそのうえで荒神山に向かいその山に入った。山に入るとすぐにだった。
 権作は悟作にだ、こう言った。
「この山が一番獣が多いよな」
「この辺りの山ではな」
「それでどうして皆神様なんか恐れてな」
「あまり入らないでか」
「高い場所まで行かないのかって思ってたんだよ」
 前々からというのだ、右手にある鉄砲は今は持たれているだけだ。これは悟作の鉄砲も同じである。犬達は二人の傍に忠実に控えている。
「おらはそれが嫌でな」
「これからか」
「ああ、高い場所まで行ってな」
 そうしてというのだ。
「何なら山の頂上まで行って」
「神様がいないとか」
「確かにしてやるからな」
 こう言うのだった。
「今から」
「そうか、しかしな」
「今度は何だよ」
「若しいたらだ」
 その山の神がというのだ。
「いいな、もうな」
「ここから去れっていうんだな」
「ああ、そこから先は行くな」
 神がいる場所から上はというのだ。
「神様の世界だからな」
「そこに入るとか」
「御前さんは本当に食われるそ」
 その神にというのだ。
「だからだ、いいな」
「いいさ、若し本当にいたらな」
 いる筈がないと思いつつもだ、権作は悟作に答えた。彼が思う神とは神社に祀られている困った時のという存在であり何処か仏と混ざっているものだ。だからそんな神なぞいる筈がないとはっきり言ったのだ。
「その時はもうだ」
「先には行かないな」
「ああ、絶対にな」
 このことを約束してそしてだった。
 二人は犬達と共に山の上の方に登っていった、途中二人共兎を二羽ずつ捕らえた。それで権作は兎を手に悟作に話した。
「もう二羽ずつだ」
「どれも大きくて肥えたいい兎だな」
「この山はとにかく獣がいいんだ」
 大きくて肥えていてというのだ。
「だから余計にな」
「この山の神様を怖がるのがだな」
「駄目だって思うんだよ、おらは」
「獲物がいるならか」
「獲らないと駄目だろ、獲り尽くさない位にな」
 この辺りの加減は権作もわかっているつもりだ。
「だから余計にな」
「神様がいてもな」
「狩りの邪魔だろ」
 それでというのだ。
「だからな」
「狩ってだな」
「そうしてな」
「この山で普通に狩りをする様にもするんだな」
「絶対にな」
 強く意気込んで言ってだ、そしてだった。
 権作は山をどんどん登っていった、悟作は犬達と共にその彼の横にいた。そうしてある程度の高さまで行くとだった。
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