第四章
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旅行を続けた、そして旅行から帰った後でだ。彩夏は明良に後で自分が調べた一本だたらのことを話した。
「何か元は山の神様だったらしいわよ」
「ああ、妖怪ってね」
明良も大学での学問で読んだ知識から応えた。
「神様が零落したね」
「そうした存在らしいわね」
「だからなのね」
「一本だたらもね」
この妖怪もというのだ。
「実はね」
「元は山の神様だったのね」
「そうだったみたいよ」
「所謂祟り神?まつろわぬ神?」
「そんなのだったのかしら」
「それか元々崇められていたのが零落して」
その結果だというのだ。
「妖怪になった」
「そうかも知れないのね」
「そういえば神様の領域でもそうした話があるし」
「そうよね」
「ある日はその場所に入るなとかね」
「神社とかであるわね」
「山だってね」
一本だたらのいる山に限らずにだ。
「そうよね」
「じゃあ神様と妖怪ってね」
「全く違う様で近くて」
「一本だたらは今は妖怪でも」
そう言われているがというのだ。
「神様だった時みたいに」
「あの日に入ったら駄目ってなっていて」
「そうした存在なのね」
「神様と妖怪って実際あまりっていうか殆ど違いない?」
「そうなのかもね、日本じゃ」
「今の一本だたらは妖怪でもね」
「神様だった時と同じ存在でもあるのね」
妖怪になってもというのだ。
「祟り神みたいになってるっていうか」
「妖怪でも」
「何かあまり違いなくて」
「どうとも言えなくなったわね」
二人で話をしていて神様と妖怪の区分がわからなくなっていた、日本の神は多く実に多くの形の神がいるからだ。
その中には祟り神もまつろわぬ神もそうなってしまった神もいる、一本だたらは零落して妖怪になったが。
祟り神かも知れない、少なくともその十二月二十日は封じられている山には入ってはならないという話は神の領域を思い出させてだ。
それでだ、彩夏は明良にこう言った。
「触らぬ神に祟りなしでね」
「妖怪もそうなのね」
明良も応える。
「触らぬ妖怪に祟りなし」
「入らぬかも知れないけれど」
「それでその神様なり妖怪が何処にいて何時出て来るか」
「それをわかってね」
「絶対に触ったり入ったりしない」
「それに尽きるのね」
こう明良に言うのだった、二人は奈良県と和歌山県の境で見たその妖怪のことからそうしたことも学んだ。難を逃れただけでなく。
奈良の山 完
2017・11・20
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