第二章
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「その日だけはあそこに入ったら駄目らしいから」
「そうするのね」
「今日はここで楽しんで」
和歌山でだ。
「それでね」
「明日はなのね」
「あそこは通らないでね」
界無山脈、ここの道はというのだ。
「別の道で奈良に入りましょう」
「わかったわ、けれどそれだとね」
明良は関西の地図を出しつつ彩夏に言った。
「結構以上に遠回りになるけれど」
「けれどよ、妖怪が本当にいたら」
「一本だたらよね」
「大変なことになるからね」
「車に乗ってても」
「相手が妖怪だから」
それでというのだ。
「下手に逃げてもね」
「追いかけられてね」
「捕まったらどうなるか」
伝承では食い殺されるだの血を吸われるだのある、彩夏は明良にこの話もしていた。これも先輩から聞いた話だ。
「そう思うとね」
「若し本当にいたら」
「妖怪がいたら」
「じゃあね」
「ここはね」
「難を避けて」
「そう、別の道を通りましょう」
こう明良に言うのだった。
「そうしましょう」
「じゃあもう行ったけれど」
明良は彩夏があまりにも真剣に言うので頷いた、そして奈良に行く場所のことも考えて彼女に話をした。
「高野山に行って」
「山には入らないでね」
「そこから奈良の五條市に入って」
「それで奈良市ね」
「そう行きましょう」
時間はあった、大学の冬休みを利用しているので。ついでに言えばお金もそれぞれアルバイトをして貯めていたので余裕もある。
「ここはね」
「それがいいわね」
こう二人で話してだ、二人は和歌山で楽しんだ後は高野山から五條市経由で奈良県に入ることになった。
そしてそのコースで奈良県に向かうのだが。
車窓から右手に見える奈良県の山々を見てだった、彩夏は操縦席から助手席にいる明良に対して言った。
「あそこがね」
「界無山脈よね」
「伯母ヶ山にも出るっていうけれど」
「同じ日に?」
「何か感じない?」
その界無山脈の方にというのだ。
「私の気のせいかも知れないけれど」
「あそこにね」
明良はその山の方を指差して彩夏に話した。
「見えない?」
「えっ、まさか」
「ほら、山のところに」
緑の木々が生い茂るその山の中にというのだ。
「何かいるわよ」
「えっ、何処?」
他に車はなかった、それで彩夏は車を道路の端の方に停めてそのうえで明良に対して尋ねた。
「何処にいたの?」
「あそこね」
その場所をまた指差した明良だった。
「いたのよ」
「?あれって」
「彩夏ちゃんも見えたわよね」
「いたわ」
蒼白になって答えた彩夏だった、そこに彼女も見たのだ。
間違いなかった。一つ目で全身毛だらけの異形の者が木の上にいた。見れば木の上に立っているその足は一本しかない
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