第一章
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奈良の山
奈良県と和歌山県の境にある果無山脈には昔から言い伝えがある、その言い伝えはどういったものかというと。
「妖怪が出るんですか?」
「そうらしいのよ」
大学のテニス部のサークルにおいて高梨彩夏は先輩からその話を聞いて怪訝な顔になった。黒髪を伸ばしていて面長の顔の顎の先は尖っている。切れ長のアーモンド形の目で奇麗なカーブの眉が印象的だ。背は一六一位で整ったスタイルをしている。
その彼女がだ、先輩にこう言われていたのだ。
「あそこ妖怪が出るらしいのよ」
「一本だたら、ですか」
「目が一つ、足が一つの妖怪でね」
先輩はその一本だたらの姿も話していく。
「普段は偉いお坊さんに封じられ出て来ないらしいけれど」
「普段は、ですか」
「そう、十二月二十日にだけは出て来るらしいのよ」
「十二月二十日ですか」
「この日に一本だたらのいる山に入ったらね」
先輩は彩夏に怪訝な顔で話していった。
「妖怪に襲われて血を吸われるらしいのよ」
「そんな話があるんですか」
「そう、だから十二月二十日はね」
この日はというのだ。
「絶対にあの辺りには行ったら駄目というか一本だたらのいる山にはね」
「入ったら駄目ですか」
「そう言われてるのよ」
「そうなんですか」
「そう、だからね」
それでと言う先輩だった。
「彩夏ちゃんもその日はね」
「絶対にですね」
「その山には入らないでね」
「奈良県と和歌山県の境ですね」
「そう、十二月二十日よ」
その日のことも話す先輩だった。
「多分旧暦だけれど」
「ああ、昔のお話だから」
「そうだと思うわ、とにかくこの日はね」
「その山には入らない」
「そうしてね」
「わかりました」
この時は軽く応えた彩夏だった、だがこの一年後だった。彩夏はある日友人の小林明良と共に関西の方に車でドライブに出ていた、明良は和風の顔立ちで黒髪を長く伸ばしており頬が少しふっくらとしている。目も和風な感じで背は一六〇位の昔ながらの大和撫子といった感じだ。
その明良と共に旅行をしていた中でだ、和風趣味の明良が言ってきた。
「ねえ、これから奈良に行くけれど」
「そうよね」
今二人は和歌山に行く、そこから奈良に行く予定なのだ。
「明日和歌山を出てそうして奈良に入っていくけれど」
「どうしたの?」
「今旧暦で何日かっていうと」
こう彩夏に話してきた。
「十二月十九日よ」
「えっ、今何て」
「だから十二月十九日よ」
明良は笑って話した、何ともない顔である。
「旧暦だとね、今ふと思ったけれど」
「まずいわね。それは」
「まずいって?」
「あのね、実はね」
彩夏は明良に彼女が先輩から聞いた話をそのまました、そのうえで明良にあらた
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