第三章
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「余もその西瓜とやらを食してみよう」
「どれだけ美味いかですか」
「それを確かめられる」
「そうされるのですか」
「そうしよう、ではすぐにな」
まさにと言うのだった。
「その西瓜を持って参れ」
「宜しいのですか?」
侍の一人が殿様に言ってきた。
「西瓜を食して」
「何か問題があるのか」
「いえ、西瓜は安く民達が普通に食する様な」
「そうしたものですが」
「随分と安いものです」
「そして食い方もです」
「瓜等と比べると品がないですが」
こう殿さまに言う、だが殿様は彼等に平然と答えた。
「よい」
「左様ですか」
「では殿の御前に持って参ります」
「その西瓜を」
「民達が食べている形にして」
「そのうえで」
「頼むぞ、それでだが」
殿様は西瓜のことをよしとしてさらに言った。
「城下町や村のことは聞いた」
「田畑のことも」
「そちらもですな」
「このことは政に活かす、では藩全体のこともこれからはな」
是非にと言うのだった。
「見てそのうえでな」
「はい、お話します」
「殿にありのまま」
「そしてですな」
「政にですな」
「活かすとしよう」
こう言ってだ、そしてだった。
殿様は今はその西瓜とやらを食べることにした、昼の飯の最後に出て来たそれは三角に切られていて。
皮は緑と黒の縦縞模様でその皮と比べて中身は大きくしかも赤かった。黒い種もいくつか見られていてだった。
殿様はそれを見てだ、まずはいささか驚いて言った。
「これはまたな」
「珍妙な、ですな」
「うむ」
まさにとだ、己の前に控える家老に答えた。後ろには若い侍達もいる。
「こうしたものであったか」
「はい、これがです」
「西瓜じゃな」
「左様であります」
「これを民達は今の季節にじゃな」
「夏にです」
まさにこの季節にというのだ。
「食べています」
「そうなのか」
「はい、井戸の中に入れてです」
「井戸のか」
「その水に入れて冷やしてです」
そうしてというのだ。
「食しています」
「そうなのか」
「それがこの西瓜というものでして」
「これをか」
「はい、美味く食しております」
「左様か、ではこの西瓜もじゃな」
「まずは一個買いまして」
城下町の店のうちの一つでだ。
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